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日本の『食の安全』健康食品を斬る 告発レポート
「わが国のハチミツは全て偽モノ」
(社)全国はちみつ公正取引協議会の闇を暴く!
平成20年(2008年) 1月31日(第293号)
いっこうに改善・改革が為されない
−食品のGメンは有形無実にならないか−
「消費者庁」「食品Gメン」
で偽装はなくなるのか!?
一月九日、福田康夫首相は消費者行政を強化するため、各省にまたがる窓口を一元化する「消費者庁」の創設方針を明らかにした。これまで、食品表示を取り扱う省庁は農林水産省(JAS法)、厚生労働省(食品衛生法、健康増進法)、経済産業省(計量法)、公正取引委員会(不当景品類及び不当表示防止法)とバラバラであった。省壁≠ノ阻まれ効率性に欠けていた法の運用をより有効なものにしようという考えなのだろう。
「消費者庁」がどういった業務と権限を持つ官庁になるかはまだはっきりしてないが、おそらく同庁は食品表示を取り締まるようないわゆる「食品表示法」なるものを運用するのではなかろうか。現在、ハチミツはJAS法の適用を受けていない数少ない食品であるが、「食品表示法」制定の暁には、蜂蜜もこの法律の対象とし、法の下で消費者が安心して購入できる環境を整えていただきたいものである。
次項で「加糖ハチミツ」の問題について触れるが、ハチミツの食品表示を巡っては、「なにを持ってハチミツとするのか」という根本的な定義をしっかりと決める事が重要である。「食品表示法」適用の際には、ハチミツの定義を再検討し、(社)全国はちみつ公正取引協議会の定めた規約ではなく、コーデックス委員会の定めた国際基準へと是非改めて欲しい。
また、昨年十二月十七日、政府は農林水産省の中に二十人規模の「食品表示特別Gメン」を設置することも決定している。東京・大阪・福岡の農政事務局に食品Gメンを配置し、大規模な偽装事件に備えると言うのだ。
さらに十一月にはJAS法を所管する農林水産省と警察庁が情報交換を柱とする連帯強化の協定を結んでいる。
日本人の誇りは何処へ
これまで、JAS法違反者に対しては強制力を持たない農林水産省が同法違反業者に改善指示を行い、それでも改善が見られず違反行為を繰り返した場合に限り警察へ告発できるという仕組みであったが、この協定により改善指示を待たずに警察が不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で違反業社の捜査に乗り出せるようになった。政府が「国民の安全、安心を重視する政治への転換」をはっきりと打ち出し、食品偽装対策をより一層強化していくことは消費者としてはありがたい限りである。しかし一方で、このような対策を取らなければ食の安全が保てない業界モラルの低さには憤りを感じざるを得ない。そして憤りとともに日本人の誇り、生真面目さ、誠実さ、正直さはどこへ行ってしまったのかと嘆かわしい気持ちにもなるのである。
「加糖はちみつ」は、
はちみつなのか
「加糖はちみつ」について、〓社全国はちみつ公正取引協議会の作成した「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(以下、規約)第二条三項では次のように定められている。
「この規約において『加糖はちみつ』とは、はちみつに異性化液糖その他の糖類を加えたものであって、はちみつの含有量が重量百分比で六十パーセント以上のものをいう」
つまり、「加糖はちみつ」には、水あめや異性化液糖といった人工甘味料を最大で四十パーセント加えることができるというのである。ここで一つの疑問が浮かぶ。それは人工甘味料の割合は、何故三十パーセントでも五十パーセントでもなく、四十パーセントなのだろうということだ。人工甘味料を四十一パーセント以上加えると「偽加糖はちみつ」になるわけだが、その根拠は何なのだろうか。
この割合がどのように決まったのかは定かではないが、おそらくそこに科学的な、もしくは食品表示上合理的な理由は存在していない。
なぜなら、国際的な食品規格を作成しているコーデックス委員会は、はちみつを「(ハチミツ)の本質的成分が変化したり、品質が損なわれるような加熱や加工が施されてはいけない」と定義し、ハチミツに一切の混ぜ物を禁じているからである。
世界から置き去りに
された日本のハチミツ
コーデックス委員会の定めた国際規格に照らし合わせた場合、人工甘味料が加えられた「加糖はちみつ」をハチミツとして取り扱う事はできない。
戦後復興を驚くべき早さで成し遂げて経済大国・技術大国となり、先進国の仲間入りを果たした日本にいるとこの国で定められた様々な規格はいずれも世界レベルにあるものと思いがちである。
しかし、ことハチミツに関しては、日本は国際基準に遠く及ばない世界で最も遅れた後進国である。
〓社全国はちみつ公正取引協議会が定めた規約第二条三項とは、人工甘味料の加えられた偽ハチミツを「はちみつ」として流通させるために作られた条文であると言い換えることが出来る。これは世界基準に逆行しているだけでなく、さらに日本を後進国化させるものである。
なぜ、日本だけがこうした「偽ハチミツ」をハチミツとして流通させているのだろうか。いくつかの理由が考えられるが、そのうちの一つに異物混入検査を挙げることができる。〓株ミートホープ社による偽装牛肉事件では、偽装に用いられた食品をDNA検査することにって比較的簡単に豚肉やラム肉の混入を見破る事が出来た。
違反してもばれない
食材そのものが動物や植物から出来ている食肉、魚、穀物類などは食材にDNAが保存されている訳である。しかし、花蜜を主な原材料とするハチミツにDNAは存在していない。
このため、ハチミツに異物(人工甘味料)が含まれているか否かは、TLC、薄層クロマトグラフィという検査方法を用いて糖の種類を分析することになるのだが、こうした検査方法が確立したのはここ数年ほど、二十一世紀になってからの話なのである。
さらにこうした検査方法が確立された現在においてもなおハチミツに含まれている異性化液糖の割合を測ることはできないという。つまり、現行の検査方法では、人工甘味料が含まれている事実や水あめ混入の有無は判別できても、それが何パーセント含まれているのか、重量比で何割含まれているのかを正確に測ることはできないのである。
このことについて、協議会の岡本光治専務理事は「人工甘味料が八割含まれていても分からない」旨を述べ、その事実を認めている。
違反をしてもバレる事がないという現状の検査体制下では、「偽加糖はちみつ」はメーカーが誤魔化そうと思えば、いくらでも流通させることができてしまうのである。
欧米に「加糖
はちみつ」はない
こうした検査体制は欧米も同じである。ただ、日本と欧米が根本的に違うのは、「検査できず、人工甘味料がどれだけ加えられたか分からないのなら、人工甘味料が僅かでも含まれたものは『ハチミツ』として扱わない」とし、人工甘味料を加えたものを一切はちみつとして流通させていないという点である。当然、欧米に「加糖はちみつ」という商品は存在しない。
こうした欧米の対応と比較すると日本の、〓社全国はちみつ公正取引協議会の対応には呆れてしまう。検査によって計測することのできない割合を規約で定義するなど余りに杜撰、デタラメである。
「加糖はちみつ」の規約制定を実施した時の協議会会長は野々垣孝氏である。同氏は昨年、純粋ハチミツに人工甘味料が混入していた事案等の責任を取る形で会長職を辞任しているが、規約は今も生き続けている。
一連の事案を引き起こしたことに対し、野々垣氏の口から直接、謝罪の言葉が述べられることはついになかったわけだが、同氏が真に反省しているかどうかは、今も野々垣孝氏が「精製はちみつ」を作る最大手企業「〓株アピ」の社長として、業界に有形無形の影響力を誇示していることから推し量るしかない。
規約の前文には「一般消費者の適正な商品選択に資する」と謳われている。この規約のどこが適正な商品選択に資すると言うのだろうか。消費者を馬鹿にするのもいい加減にしてもらいたい。
(取材調査・国際新聞ハチミツ取材班まとめ・ ジャーナリスト・坂口義弘)
平成20年(2008年) 1月 1日(第292号)
ハチミツ偽装に打つ手無し
−しょせん無能・低レベルの業界と協議会−
「食品偽装」は
流行語大賞にノミネート
二〇〇七年ほど食品の安全性や表示、賞味期限等が問題となった一年はなかっただろう。年頭に当たって、またまたきついペン運びになってしまう。「清水寺」(京都市東山区)の一字が「偽」(にせ、偽り)になったことも一連の事件を振り返れば納得だ。
一月、(株)不二家(東京)による賞味期限切れ材料の使用問題。五月、「純粋はちみつ」に加糖の疑い。(社)全国はちみつ公正取引協議会の杜撰な対応が問題に。六月、(株)ミートホープ(北海道苫小牧市)の偽装牛肉。八月、石屋製菓(株)(札幌市西区)の白い恋人賞味期限偽装。九月、宮崎県の養鰻業者による台湾産うなぎの国産表示。十月、赤福(三重県伊勢市)の赤福餅(五平餅)賞味期限切れ食品再利用。十月、比内鶏(秋田県大館市)による廃鶏(はいけい)の比内地鶏偽装表示。十一月、船場吉兆(大阪市中央区)による地鶏の産地偽装、賞味期限偽装。身近なところではファーストフード・マクドナルドのサラダ、コンビニエンスストア・ローソンのおでん、崎陽軒のシューマイと数え上げればきりがない。「どんだけえ〜」と声をあげたくなるところだが、「食品偽装」と言う言葉は二〇〇七年ユーキャン新語流行語大賞のベストテンに入ってしまったわけで、食品業界は問題が発覚した企業と扱う食材が違うからと「ハニカミ」ながら「鈍感力」を使って気が付かないふりををしてみたり、「そんなの関係ねえ」などと知らぬふりを決め込んでいる場合ではなくなってしまった。食品が傷みやすい「猛暑日」でも「「ネットカフェ難民」や「(消えた)年金」生活者が安心して「大食い」できるように今年は食への不審を払拭するために「どげんかせんといかん」のである。
変わる消費者意識
毎週のように食品偽装問題が報道される中、某週刊誌は、「賞味期限切れでも食べられる。魔女狩りはやめろ」という趣旨の記事を掲載していたが、消費者は食品が食べられるか、それとも食べられないかという点を問題視しているわけではないように思う。確かにこれまで、食べ物が社会問題として取り上げられるときは、食中毒や残留農薬、抗生物質などヒトの健康に直接悪影響を及ぼすケースに限られていた。代表的な例は二〇〇〇年六月、雪印による一連の食中毒問題だろう。しかし、昨年一月(株)不二家による消費期限材料の再利用問題を契機に消費者の意識はより厳しいものへと変わっていった。二〇〇七年問題となった数々の偽装表示食品が例外なくそうであったようにこれらの商品を食べ、健康被害が報告された例は一つもない。それどころか消費者は「美味しい。美味しい」といってた食べ続けていたのである。筆者がハチミツの問題に取り組み始めた三年前、「偽装表示をしたところで健康に悪影響が出ますか?」と開き直りとも取れる発言をした関係者がいたが、その頃とは状況は一変している。消費者の意識は明らかに消費者自身がこうむる直接的な健康被害だけでなく、問題を起こした企業そのものに向けられている。つまり、外国産と偽った、回収された製品を二次利用した、賞味期限を改ざんしたという違反事実だけでなく、消費者を無視して利益を優先した嘘ついているという企業の姿に腹をたてているわけである。そのため、企業がもったいないという言葉で釈明したところでそれはまったく意味をなさない。もったいないという言葉を使うなら、なぜ再利用や消費期限の延長を隠していたのか。安全上問題がないのなら、その根拠をきちんと説明し、商品にもその旨をきちんと表示すべきだろうと主張するわけである。だから、はじめの記者会見で発表された内容が後の記者会見で二転三転するようなことが繰り返される度に食品表示への不信感はより一層高まり、エスカレートしていくのである。
変わらない
ハチミツ業界
先に挙げた違反企業はその後どのような顛末を辿ったのだろうか。(株)ミートホープは、八月三日に破産、社長の田中稔氏は十月二十四日不正競争防止法違反で北海道警に逮捕された。詐欺罪での立件もあり得るという。石屋製菓(株)は、八月十七日に石川勲社長が引責辞任。およそ三ヶ月間に渡り操業を停止し、十一月二十二日に販売を再開した。赤福は、百貨店や売店が販売を自粛、赤福本店は現在も臨時休業している。販売再開の目処は立っておらず、お正月の伊勢神宮参りには間に合いそうもない。船場吉兆は組織偽装であることを認め、一部商品の販売自粛、営業休止に追い込まれている。今後は食品販売から撤退し、料亭だけの営業で存続を図るとも言われている。翻って、昨年五月に純粋はちみつに加糖の疑い≠ニ報道されたハチミツ業界はどうなったのだろうか。(社)全国はちみつ公正取引協議会の会長だった野々垣孝氏は引責辞任したが、後任の会長職には協議会会員団体である(社)菓子・食品新素材技術センターの理事長・早川幸雄氏が就任している。杜撰な指導・管理体制の理由を聞かれ、「同業者間では踏み込んだ調査がしにくく、人員がかぎられていることもあり、手続きを怠ってしまった」と弁解しているが、身内で組織を少しいじったところで、問題の解決には至らない。馴れ合い体質を内包した運営体制、脆弱すぎる組織力、効力を発揮できない権限など見れば見るほど、協議会の限界・能力不足を感じざるを得ないのである。しょせん、無能、低レベルの団体であることは否定できまい。協議会がさまざまな問題を抱えている事は事実である。
中でも協議会に日本で流通するハチミツの食品表示を管理する能力が備わっていない事が最も大きな問題である。能力の乏しい組織が「公正取引マーク」の発行や違反企業の調査など能力以上の権限を担おうとするから結果的に無理が生じるのである。今もって協議会が「安心・安全のマーク」と称して「公正取引マーク」をパッケージに貼付させていることは、無責任極まりないと言わざるをえない。
ハチミツもJAS法を基準とし、消費者不安を払拭せよ
蜜蜂は家畜であり、ハチミツは食品である。それにも関わらず、これまでハチミツは日本農林規格法(以下、JAS法)の適用を受けてこなかった。JAS法の代わりを業界団体である(社)全国はちみつ公正取引協議会が規約に沿って務めるという仕組みだったわけだが、この体制が機能していないばかりか、既に崩壊していることは明白である。JAS法は決して万能ではない。むしろAS法には消費者ではなくメーカー寄りの法律だという批判が付きまとっている。昨年十二月に野中商店(福岡県立花町、野中秀樹代表)がJAS法に違反して「有機栽培」表示をしたジャムを販売していたことが明らかになったが、違反状態はなんと十年以上も見過ごされていた。また、精肉石川家(仙台市若林区、石川里美社長)に至ってはJAS規格の適合認定を受けていないにも関わらず、商品にJASマークを使用、市内の給食センターに納入していた。農林水産省によるJAS法の運用、管理に問題があるのは間違いない。それでも日本に食品を取り締まる法律がJAS法と食品衛生法しかない現状では、ハチミツもJAS法の適用を受け、法に基ずく表示の厳格化、検査体制を整備する必要があるはずだ。そうしなければ、違反企業が法的に罰せられると言う当たり前のペナルティすら課せられることはなく、業界はなんら改善されないだろう。消費者は、過去七年間に実施された協議会の定期検査によって警告された百四十一業者の企業名、商品名がいまだに公表されていない事を知るべきだ。また、検査で陽性反応が出た原因の解明、再発防止に向けた改善策が提示されていないことを忘れてはならない。(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。まとめジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年)11月30日(第291号)
無責任・ずさんな協議会と業者の実態
-ダメ業者よ「薬蜜本舗」を見習え-
協議会の組織力の限界
前号で、(社)全国はちみつ公正取引協議会(以下、協議会)の組織的欠陥について触れたが、さらに検証を加えたい。
協議会は中央区日本橋本町にあるビル五階に事務所を構えている。五階フロアには協議会を含め三つの事務所が入り、協議会の事務所は八十平方メートルくらいの広さだろうか。
協議会の名称には「全国」という言葉が頭についている。「全国」という言葉から中央区にあるような事務所が全国に、少なくとも大都市圏や養蜂業の盛んな地域などに何ヶ所かあるのだろうと思うが、実際には中央区の事務所一ヶ所しか協議会の連絡先は存在しない。
しかも、そこで働く常勤職員は岡本光治専務理事と事務職員の二人だけだという。岡本専務理事は公正取引委員会からの天下りで、養蜂経験があるわけでも成分検査の経験があるわけでもない。養蜂、検査に関してはまったくの素人である。
さらに、協議会はハチミツの成分を分析する独自の検査・研究施設を所有していない。中央区日本橋本町の事務所には検査機器すら一つとして置かれていない。
都内に一箇所ある事務所にたった二人の職員、機材や検査施設を持たない団体がどのように全国に散らばる養蜂家、ハチミツメーカーを指導・監督するのだろうか。また、年間四万トンも輸入される外国産ハチミツに目を配るというのだろうか。
仮に養蜂場や製造工場、原産国へ足を運べばそれだけで事務所は留守になってしまう。そもそも養蜂・成分検査の素人が一人、二人で行う調査では成果など上がろうはずもないが……。
協議会はパッケージに「公正取引マーク」を貼り付けさせ、「安心・安全マーク」と謳っているが、発行元である協議会に人口甘味料の混入を見分け、偽ハチミツの流通を阻止し、消費者の食の安全を保障するだけの組織的・人的能力が備わっているとは到底思えない。
元会長・野々垣孝よ
責任を果たせ!
前号と今号で協議会の組織的欠陥を指摘してきたが、こうした問題は昭和六十二年七月の設立以来、今だ連綿と続いているものである。
八月二十八日に実施された記者会見では、追加検査の結果と合わせて八月二十七日付けで協議会の野々垣孝会長(潟Aピ・岐阜県)と秋山優男副会長(秋山養蜂・静岡県)が辞任したことも発表された。野々垣孝氏の辞任理由は、二〇〇〇年以降、協議会の実施した定期検査で違反の疑いを持たれたハチミツが多数判明していたにも関わらず、規約に沿ってこれを再調査することなく、公正取引委員会への報告も怠っていたというものであった。
しかし、こうした理由が報告された記者会見の場に野々垣氏の姿はなく、一連の問題の過程においても野々垣孝氏自身がメディアの前に現れ、謝罪や経緯の説明をすることはついになかった。
こうした対応は、食の安全に関わる法人団体のトップを務める者としては間違いなく適当でなかったはずだ。野々垣孝氏の姿勢が世間の常識といかに懸け離れたものであるかということは、その後次々と明らかになった食品偽装・偽装表示問題において、企業・団体のトップが会見に臨み、謝罪・説明していることを引き合いに出すこともないだろう。
協議会自体にハチミツの食品表示を管理する能力が欠如していることはこれまで述べてきた通りだが、自らの言葉で謝罪することなく辞任した野々垣孝氏にも協議会会長としての能力は備わっていなかったのだろう。逆に言えば、こうした人物が会長を務めていた団体だからこそ、一連の問題が起きたのだろう。
杜撰(ずさん)な輸入管理、
深まる中国産蜂蜜への不安
副会長を辞任した秋山優男氏が経営する秋山養蜂(静岡県藤枝市仮宿一一七四)は、再検査を受けた百十三社中、唯一、基準値を超える人口甘味料が検出された企業である。検査結果では、「中国から輸入しており、原因を特定できなかった」とした上で、「(秋山養蜂が)自ら混入したものではないが、ハチミツの定義に合致しない製品をハチミツとして販売した」として警告処分をうけている。
秋山養蜂は、中国から約二千八百五十キロのハチミツを輸入し、今年一月から七月にかけて「中国産れんげハチミツ」として約二千七百キログラム(約六千七百本)を販売。このすべてに重量比十二・五パーセントの割合で人口甘味料が混入していたという。二千七百キログラムといえば、国内産ハチミツの年間生産量の三分の二以上を占める膨大な量である。
秋山養蜂は「社内での混入ではなく輸入前の混入とみられる。健康被害は確認されていない」などとコメントしているが、問題は秋山養蜂に故意や過失があるかということだけに止まらない。
むしろ、検査結果と秋山養蜂のコメントから、中国産ハチミツへの不審はより強まったといえる。
あまりにも無責任だ!
国籍を問わず、外国産ハチミツを輸入する場合、輸入方法は大きく二つに分かれる。
一つは、海外に養蜂場を経営、または海外の養蜂家と直接契約し、ハチミツを輸入する方法。
もう一つは、輸入商社を通して間接的にハチミツを輸入する方法である。
秋山養蜂がどちらの方法で中国から輸入していたのか定かではない。自ら販売する商品がどこでどのように採れたハチミツであるか把握できていないにも関わらず、「純粋」な「れんげ」ハチミツとして販売することは、あまりにも無責任である。
秋山養蜂と同様に輸入商社を介して中国産ハチミツを輸入しているメーカーは少なくない。むしろ、輸入商社を通して中国産ハチミツを輸入しているメーカーの方が多いのではないだろうか。
その全てが秋山養蜂のような杜撰な管理をしているわけではないのだろうが、「中国から輸入しているため、原因が特定できない」という再検査結果を協議会が正式に発表し、「輸入前の混入と見られる」などという曖昧なコメントを秋山養蜂自身が出していることを見ると不審感は拭いきれない。
ハチミツは加工や添加をしない天然甘味料であり、蜜蜂が集めた蜜をそのまま瓶詰めした自然食品である。なればこそ、どこでどのように採れたハチミツであるかということが安心・安全に直結するのだが、それを把握しないまま、メーカーが「純粋ハチミツ」として販売することが平然とまかり通っている。
「中国産だから駄目」
ではない
ここで誤解して頂きたくないのは、中国産だから駄目だということでは決してないということである。「薬蜜」で有名な薬蜜本舗のハチミツは中国産であるが、自社のホームページや広告誌で採蜜の場所や方法、瓶詰めの流れなどを公開している。情報公開が信頼を呼び、中国産ハチミツでありながら高級ハチミツとして消費者に認知されている。他の業者も見習ってほしいものだ。
ハチミツ選びで重要なのは、原産国や「純粋」という言葉、「公正マーク」というシールではない。どこでどのように採れ、瓶詰めされたものなのか、きちんと把握できる商品であるかということなのである。
購入したハチミツに不安をお持ちの方は、販売元のホームページを見てみるとよい。「自然の恵み」、「天然」、「完熟」などと聞こえの良い言葉が並び、ハチミツのあれこれについて述べているところは多いが、採蜜場所や方法について具体的に掲載しているところは驚くほど少ない。
中にはハチミツの製造方法と言いながら、瓶詰め工場での手順を掲載しているだけのところもある。たしかに高温加熱処理を加えない瓶詰め方法も大切だが、より重要なのは現地(養蜂場)におけるハチミツの集め方と輸入されるまでの処理方法である。
独立行政法人の農林水産消費安全技術センターでは、食品表示に関する苦情や相談を受けている。お手持ちのハチミツに不安を覚えた方は管轄するセンターに問い合わせてみては如何だろう。
なお、同センターは違反企業に関する告発も受け付けている。偽ハチミツについて情報をお持ちの方は是非、連絡して欲しい。
(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。まとめ ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年)10月31日(第290号)
協議会は身勝手で身内主義
−消費者の立場に立った調査をしない−
追加調査は信頼できるのか?
社団法人全国はちみつ公正取引協議会(以下、協議会)は、追加調査に弁護士・大学教授・消費者団体代表など第三者を交えた調査委員会を設けることで、公平性・有効性をアピールしたいのであろう。しかし、八月二十八日「会員企業自ら異性化液糖を混入させた事実は認められなかった」と発表した調査結果を鵜呑みにする事はできない。前号では、蜜蜂の生態やハチミツの生成といった視点から「餌として使用した異性化液糖が残留した」という説明が成立しない事を述べた。今号では、協議会の組織的問題に焦点を当て、調査そのものの問題点を浮き彫りにする。
任意調査の限界
社団法人である協議会には、警察・検察のような強制力を伴う調査権は認められていない。このため、今回の追加調査は調査対象となった企業の協力のもと、任意調査を行ったということになる。任意調査の場合、調査の対象となった企業から協力を得られなければ、十分な調査は行えない。警察が家宅捜査で証拠を押さえるのも、国税局が不正な蓄財を摘発するのも、その捜索が強制力を伴うものだからである。嫌がる扉を強引にこじ開け、大量に押収した書類を分析することで悪事が暴かれるわけである。さらにこの捜索・摘発は、相手に察知されないよう秘密裏に準備、実行される。もしも事前に覚られれば、証拠隠滅・逃亡といった事態に陥る事は必至である。相手の不意を突き急襲してこそ、その効果は十分に発揮されるのである。しかし、今回の追加調査「偽ハチミツが流通している」という新聞報道を受けた数週間後、協議会が「追加調査を実施する」と宣言した上で実施されたものである。さらに「調査は平成十八年度に違反の疑義が生じた企業」と調査対象企業までも明らかにされている。これでは、国税局が「昨年度、貴方に脱税の疑いがありますので、これから摘発に行きます」と相手に伝えてから関係各所を捜査しているのに等しい。その結果、脱税が摘発されるか否か、敢えて説明するまでもないだろう。秋山養蜂(静岡県藤枝市)をはじめとする調査企業十三社は、自社に対して追加調査が実施されるという情報を事前に入手していた訳で、異性化液等を処分する事も帳簿・台帳類を改ざんする猶予も言い訳を取り繕う時間も持ち合わせていたといえる。こうした状況下で実施された調査にどれほどの公正性が担保されているのだろうか。発表された調査結果に問題があることは先月号で述べたとおりだが、その結果を導き出した調査そのものの有効性にも疑問を抱かざるを得ない。
組織矛盾その1
身内が身内を指導・監督する馴れ合い体質
偽装牛肉事件を起こした〓株ミートホープ社に対する行政の任意調査が一定の効果を発揮したのは、マスコミ監視のもと証拠隠滅の猶予を与えることなく抜き打ちに近い形で検査が行われたためであろうが、そこには保健所・農林水産省といった行政側とミートホープ社の関係が互いに独立しているという当たり前の構図が存在している。通常、取締り・指導監督をする組織とその対象とは独立、場合によっては対立関係にあるものである。企業が外部監督調査制度を設けるのは、敢えて組織外からチェックを受ける事で対立的な環境を社内に作り出し、経営の透明性や緊張感を維持する事が狙いなのだろう。しかし、同協議会とその会員であるハチミツメーカーとの間には、指導・監督の大前提とも言うべきこの根本的な関係が成立していない。なぜなら、違反調査・指導是正を行う協議会は、調査対象であるハチミツメーカーによって構成されているからである。会員から役員、会長まで全てがハチミツメーカーであり、事務局長に至っては公正取引委員会から天下りした元官僚である。この関係は、違反行為を当事者が調べるという構図であり、対立関係・緊張関係は存在していない。そこにあるのは、身内同士をかばい合う蜜よりも甘い馴れ合いだけである。こうした構造的・欠陥を抱えている協議会が実施した任意の追加調査によって、ハチミツメーカーの故意・過失を証明する事ができるのか。賢明な読者には容易に想像できるはずである。「会員企業が自ら異性化液等を使用した事実」など一から認められるはずがないのである。
組織矛盾その2
傀儡協議会はハチミツ業界メーカーの意のまま
同協議会は、公正取引委員会の管轄する法人である。養蜂は畜産業に分類で、ハチミツは天然食品であるわけだが、農林水産省や経済産業省などの行政から補助金を受けていない。補助金を受けていないというと清廉潔白なイメージを抱いてしまうが、何のことはない、業界丸抱えの任意団体ということである。協議会の運営費は、会員であるハチミツメーカーが支払う年会費と、一枚四円で販売している「公正取引マーク」の売り上げで賄われている。現在、協議会に加盟している企業は百四社である。大手企業を中心に加盟しているため、ハチミツの市場流通量に対する占有率は九割近いが、養蜂業者の数に対しする加入率は五割程度にまで落ち込む。また、一枚四円で販売されている「公正取引マーク」も会員であるハチミツメーカーが製造・販売するすべてのハチミツに貼付されているわけではない。会員企業に「公正取引マーク」の貼付の判断はハチミツメーカーの自由である。協議会に加盟するある養蜂業者は「一枚四円の手数料を支払えば、利益はその分圧縮される。消費者は必ずしもマークの有無で購入を判断していない。マークの貼付は自由だから、同じハチミツでも商品によって貼らない場合もある」と話す。
また、協議会への加入・脱退・未加入の選択もハチミツメーカーの自主判断に委ねられている。協議会はハチミツメーカーと同一、否、支配下にあるわけで、消費者の視点に立った調査など実施できるはずもないし、会員であるハチミツメーカーの不利になるような結果を発表することもない訳である。こうした関係は、通常見られる行政機関と企業のものとは大きく異なっている。取り締まり・指導監督する側とされる側との関係は、そこに存在していない。全国の養蜂業者・養蜂家、国内に流通する四万三千トンものハチミツに目を配ることなどできるはずもないのである。(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 9月30日(第289号)
野々垣・全国はちみつ公正取引協議会会長辞任!?
−多くのナゾに答えぬまま無責任雲隠れ−
「越冬用のえさ(砂糖水)」はハチミツに混ざらない
五月十六日、(社)全国はちみつ取引協議会(以下、協議会)は、東京都中央区日本橋本町四丁目所在の同協議会事務所で記者会見を開いた。十四日付け読売新聞朝刊で「『純粋はちみつ』の二割に人口甘味料が混入」と報道されたためである。この会見に出席した協議会の岡本光治専務理事は、「純粋はちみつ」へ人口甘味料が入っていることについて、「冬場のえさとして使った異性化液糖が誤って混ざってしまうことがある」などと説明し、「人口甘味料を故意に混ぜたメーカーに対しては厳格に対処するが、越冬用のえさが誤って混入してしまったものについては、ご理解頂きたい」旨の釈明をしたそうである。
その後、協議会は大学教授、弁護士など五人の有識者からなる第三者委員会を設置。平成十八年度の定期検査で違反の疑いの持たれた十三の企業に対して、定期検査の追加調査を実施し、その結果を八月二十八日に発表した。この場において、協議会は改めて「冬場にえさとして与えた異性液糖が検査に反応した」、「異性化液糖を故意に混入したメーカーはなかった」との発表を行った。
しかし、この調査結果を信用することなど到底できないのである。記者会見後の各紙を見ると協議会の発表をそのまま記事にしているようであるが、本誌取材班を誤魔化すことなどできはしない。何故、調査結果が信頼できないのか……。これからその理由を分かり易く説明したい。その上で協議会の発表通りに記事にしたメディアは、事実を確認し、再報道を検討して頂きたいものである。
協議会がハチミツ業界の都合に合わせた嘘の内容を発表していたとすれば、消費者を再び欺く行為に他ならない。そこには、問題に対する反省、真摯に向き合う姿勢は微塵も見られないからである。
デタラメな理由 1
ハチが花蜜を集める期間は、花の咲く三月下旬ころから九月下旬までのおよそ半年間に限られている。人間がハチミツを採らなければ、蜜蜂は花の咲かない冬の季節を夏場に蓄えたハチミツをえさにして過ごすのである。しかし、蜜蜂の集めたハチミツは貴重な天然甘味料であり、養蜂家にとっては大切な商品である。本来ならば蜜蜂の越冬用に残しておくべきハチミツを商品として販売する養蜂家や、メーカーは少なくない。採密量が減少する中、越冬用のハチミツを商品として採取することは、止むを得ない側面もある。そのため、砂糖水を越冬用のえさとして使うのだが、それは、蜜蜂が花蜜以外の糖分もハチミツ化する能力を持っているためである。このため、冬場のえさに砂糖水を用いるのは、日本だけでなく広く海外でも行われている。この砂糖水の濃度は、砂糖と水が、一対一の割合が基本となっている。冬場は水が冷たく砂糖が溶けにくい時期でもあるが、煮詰まった砂糖水は使えないので、ぬるま湯で根気良く溶かして利用するのである。しかし、この冬場のえさに異性化液糖を使用するという話はまったくといっていいほど聞かない。砂糖水を用いることが一般的な手法なのである。なぜなら、業者から異性化液糖を購入するよりも砂糖水の方が安く、簡単に作る事ができるからである。「異性化液糖を冬場のえさとして使った」という説明は、実際の養蜂ではほとんど見られない非常に稀な事例なのである。
デタラメな理由 2
レアケースではあるが、協議会の発表通り、異性化液糖を蜜蜂が越冬時のえさとして食べたと仮定しよう。しかし、風雨を防ぐ巣箱の中にいて、えさを与えておけばすべての蜜蜂が無事に冬を越せるというわけではない。蜜蜂は巣箱の中で塊り、蜂玉を作って越冬をする。女王蜂を中心に蜜蜂が重なり合って球状の玉を作り、お互いの体温で暖をとるのである。しかし、蜂玉の外側は寒く、充分に暖を取れない蜜蜂は一匹、また一匹と死んでいく。蜜玉は次第に小さくなり、無事に越冬できる蜜蜂は、越冬前の半分程度にまで減ることもある。こうして何とか無事に越冬し、巣箱に残った蜂の群れを養蜂用語で「弱群」と呼ぶ。暖かい春が訪れ、花が咲き始めると蜜蜂は巣箱から飛び出し、花蜜を集める。しかし、この時巣箱にいるのは蜜蜂の数が減少した「弱群」である。「弱群」のままでは、春以降の採蜜時期に十分な花蜜を集めることができない。このため、養蜂家は花が咲き始めた春先に二週間ほどかけて蜜蜂を越冬前の数に元に戻す作業を行う。このようにして越冬前の数に戻った蜜蜂の群れを養蜂用語で「強群」という。「弱群」から「強群」になるまでの間、蜜蜂は花畑を飛びまわり、花蜜を集めるが、その蜜は「弱群」を「強群」化するために新しく生まれた蜜蜂に必要不可欠な「えさ」である。もしもこの時期に採れた蜜を販売用に回せば、これから先の半年間、十分にハチミツを採り続けることはできないわけで、これを販売用に使う養蜂家はいない。一方、越冬用の「えさ」として与えられていた異性化液糖(本来は砂糖水)であるが、一週間以上掛けて「弱群」から「強群」となる間にその役割は失われていく。「えさ」として必要な異性化液糖の量は次第に減り、咲き始めた花蜜が取って代わっていくのである。
「強群」化が終了し、商品用のハチミツを採蜜する頃、巣箱には花蜜だけが溜まっており、異性化液糖は存在していない。それでも、検査で陽性反応が出るほどハチミツに異性化液糖が混ざっているとすれば、それは、ずさんな養蜂を行っていることの証明にしかならない。
デタラメな理由 3
砂糖水を越冬用の「えさ」として利用できるのは、蜜蜂があらゆる糖分を「ハチミツ化」する能力をもっているためである。「ハチミツ化」とは、簡単に言えば多糖類であるショ糖がシュクラーゼなどの酵素によって、蜜蜂の蜜胃でハチミツの構成要素である果糖とブドウ糖の単糖類に分解されることである。蜜蜂の蜜胃でこうした変化が起きるのは、現在の科学をもってしても解明されていない。しかし、これまでの研究によれば、蜜蜂はあらゆる糖分を「ハチミツ化」する能力をもっていることは解っている。蜜蜂のこの不思議な特性は、それが道端に落ちている缶ジュースの果糖ブドウ糖液糖に対しても示される。一旦、蜜蜂の蜜胃を経由したものは、すべてハチミツにしてしまうのである(ハチミツと言っても花蜜に含まれたビタミンや花粉などは含まれておらず、栄養成分的には劣っている)。
越冬用の「えさ」として使用された異性化液糖であっても、それが蜜蜂によって食べられ、一度蜜蜂の蜜胃を通っていれば、果糖とブドウ糖に分解されているのだから、商品として売られているハチミツから異性化液糖という形で検出されることはあり得ない訳である。つまり、「純粋ハチミツ」として販売されている商品から検査に反応するほど異性化液糖が検出されるということは、蜜蜂の蜜胃を通ることなく、人の手によって故意に後から糖分を加えていた事を示す事にほかならない。逆に言えば、故意に人の手によって加えられたものだからこそ、採蜜後のハチミツから、異性化液糖として検出されるのである。繰り返しになるが、「純粋はちみつ」から異性化液糖が検出された事実に対し、「越冬用の『えさ』が残ったもの」などという説明は、蜜蜂の生態、ハチミツの生成過程上成立しえないことなのである。人口甘味料はけっして誤って混ざったものではなく、採蜜後、人の手によって故意に混ぜられたのである。マスコミに養蜂のスペシャリストはいない。養蜂について詳しいことは知らないだろうから、第三者委員会を立ち上げ、適当に「冬場の『えさ』が混ざったなどと説明をすれば大丈夫だろう」とメディア、消費者を馬鹿にした姿勢は許されるものではない。「人口甘味料の混ざった『偽ハチミツ』を『純粋はちみつ』として販売していた」という嘘のうえに「冬場の『えさ』が混ざった」などという嘘を重ね続ける協議会を「はい、そうですか」と見過ごすわけにはいかない。本紙ハチミツ調査プロジェクトは、これからも手を緩めず、徹底的にこの問題を追及していく。
なお、野々垣孝・全国はちみつ公正取引協議会々長は、このほど辞任した。最後までナゾに答えぬ無責任雲隠れの醜態だった。
平成19年(2007年) 7月31日(第288号)
ハチミツ今世紀最大のピンチ!?
−2035年までに全米からミツバチが消える−
「純粋」表示
のカラクリ
日本で販売されているハチミツは、何故、「天然」「生」「完熟」ではなく、「純粋」とだけ表示されているのだろうか。答えは、(社)社全国はちみつ公正取引協議会(以下、協議会)の規約第四条一項によって、「はちみつに『純粋』『天然』『生』『完熟』『ピュア』『ナチュナル』『Pure』『Natural』その他これらと類似の意味内容を表す文言を表示しようとする場合には『純粋』又は『Pure』という文言に統一しなければならない」と決められているからだ。一見すると単に表示方法を定めただけの規約であるが、この規約に消費者の目を誤魔化そうとする言葉のトリックが隠されている。「純粋」「天然」「生」「完熟」は、いずれも自然からの恵みや自然のままの状態をイメージさせるが、それぞれの正しい意味は次の通りである。
純粋:混じりけのないさま
天然:自然のままの状態
生:加熱していない食べ物
完熟:果実または種子が充分大きくなり、内容も充実した状態になること−
高温過熱を加え、安く大量に作られたハチミツは、自然のままの状態ではなく、「天然」とは呼べない。勿論、「生」であるはずもない。また、安く大量に採るために熟成前に集められたハチミツを「完熟」と呼ぶことはできない。栄養素は削がれているが、何も混ぜられていないという意味において、唯一、「純粋」だけが、熟成前のハチミツを高温加熱処理したハチミツに使う事の出来る言葉なのである。
「純粋」の
言葉の意味とは
この規約について、協議会は、
「一般消費者の適正な商品選択に資するとともに、不当な顧客の誘引を防止し、もって公正な競争を確保することを目的とする」
としているが、果たしてそうなのか。なぜなら、この規約によって、「天然」で、「生」で、「完熟」している「本物のハチミツ」までも、「純粋」という言葉しか使えなくなってしまうからだ。「本物のハチミツ」と熟成前の高温加熱処理された「偽ハチミツ」が同じ言葉で表示されてしまうのだから、一般消費者は適正な商品選択などできないし、企業が公正な競争をすることもできない。敢えて「純粋」と統一させて表示させることに何のメリットがあるのだろうか。理解に苦しむ。
「引かない」
「足さない」
そもそも、蜜蜂が集め、熟成させたものから「何も引かない、何も足さない」はずのハチミツに「純粋」という言葉を付け加えれこと自体がおかしいのである。疑り深い記者などは、何かやましいところがあるから「純粋」と付けているのではと勘繰ってしまいたくなる。また、一般消費者には、「純粋」と付いていないハチミツがまるで純粋でない、低品質なハチミツに映りかねない。熟成前のハチミツや高温加熱処理を施されたハチミツに十分な栄養素が含まれているのか、これまで本紙をお読みなった読者には分かるはずである。人口甘味料の混入だけが「偽ハチミツ」ではないのである。高温での加熱がハチミツの栄養素を破壊することは“常識”である。「純粋」などという言葉よりも、「非加熱」という言葉を使った方がよほど消費者の商品選択に資すると思うが如何であろうか。看板に偽りあり。「純粋」という表示を鵜呑みにしてはいけないのである。
ハチミツの世界基準、
コーデックス委員会
規約を批准せよ
一九六二年、コーデックス委員会は、国連食料農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の下部組織として設立された。ローマに本部を置くこの国際機関は、消費者の健康を守り、食品貿易の公正を保証することを目的に国際的な食品企画や衛生規範を作成している。現在、百七十三ヶ国が加盟しており、日本も一九六六年に加盟している。このコーデックス委員会の定めたハチミツの世界規格では、
「ハチミツとは植物の花蜜、植物の生組織上からの分泌物、または植物の生組織上で植物の汁液を吸う昆虫が、排出する物質からapismellifexa種蜂がつくりだす天然の甘味物質であって、蜜蜂が集め、蜜蜂が持つ特殊な物質による化合で変化させ、貯蔵し、脱水し、巣の中で熟成のためにおいておかれたもの」、
「その本質的成分が変化したり品質が損なわれるような加熱や加工が施されてはいけない」
と定義されている。つまり、たとえ蜜蜂が集めた花蜜であっても蜜蜂によって貯蔵され、脱水され、熟成されていないハチミツや高温で加熱処理されたハチミツはハチミツではないと定義されているのである。なぜ、このような定義をしているのか、答えは至って簡単だ。定義に反して、熟成前の蜜を集め、高温で加熱したハチミツには、ハチミツ本来の栄養素が含まれていないからである。消費者の目線に立ち、「本物のハチミツ」だけをハチミツとして認めることで、「偽ハチミツ」の存在を根本から否定しているのである。
公正マークは
信用できない
今年五月、「純粋ハチミツ」と銘打った商品に人口甘味料が混ぜられていたことが明らかとなり、ハチミツに対する消費者の信頼は大きく損なわれた。小紙宛てにも読者から「騙された気持ちでいっぱいだ」「もう『公正マーク』は信用できません」「どのハチミツを選べば良いのか分からない」と言った声が数多く寄せられている。ある食品関係者は、ハチミツ業界の問題について次のように話す。
「なぜ、ハチミツ業界だけが、四十年以上も前に日本が加盟しているコーデックス委員会の定義に従わないのだろうか。理解できない。コーデックス委員会の定義をきちんと守っていれば、人口甘味料の加えられた『偽ハチミツ』が流通することは避けられただろう。有害物質の含まれたウナギや練り歯磨き、基準値を上回る鉛が検出された中国産製品への不信感が高まっている。ハチミツ業界も国際ルールに則って品質をしっかりと確保し、消費者の安全を守るべきだ」。
何故、「偽ハチミツ」が二割もまかり通っていたのか。その根本的問題は、世界企画を批准しない日本のハチミツ業界そのものにある。
消えた
ミツバチの謎
相対性理論を発見したアルバート・アインシュタイン博士は、「ミツバチが地上から姿を消すとき、次に死滅するのは人類だ」と述べたそうである。ミツバチは我々にハチミツを与えてくれるだけでなく、植物の受粉を助けてくれる大切な役割を担っている。アインシュタイン博士の真意は定かではないが、ミツバチが住めなくなるほどに環境が悪化し、ミツバチがいなくなれば、地球の生態系は崩れ、その影響は人類にも及ぶことを警告したかったのではないだろうか。「ミツバチが姿を消す」、そんな出来事がアメリカで起きている。「いないいない病」「郡崩壊症候群(CCD)」などと呼ばれるこの現象は、昨年十月頃に始まり、今では全米五十州のうち二十七州で確認されている。ある日突然、女王蜂と数匹の蜂を残して巣箱から蜂が消えてしまい、アメリカ西海岸では商業用ミツバチの六十パーセント、東海岸では七十パーセントがいなくなったという。中には管理する蜂の九割が消えてしまった業者もおり、養蜂家は窮地に陥っている。仮にこのままのペースで減少を続けると二〇三五年までに全米からミツバチが消えるという計算もある。今のところ「郡崩壊症候群(CCD)」が日本で起きたという報告はない。しかしもともと米国国内での見られた現象が、ポーランドやスペインに広がっているという報告もある。専門家は、農薬、ダニ、寄生虫、遺伝子組み換え植物、はたまたまストレスによる過労死が原因などと諸説を繰り出しているが、はっきりとしたことは分かっていない。そんな中、四月十六日、英国インデペンス紙には、携帯電話の電波が「いないいない病」の原因とする記事が掲載された。電磁波の危険性については以前から多くの科学者たちが警告を発しているが、国も企業も科学的に証明されてないという立場を取っており、規制の対象にはなっていない。いずれにせよ原因の究明には今しばらく時間がかかるであろう。小生には“消えたミツバチ”が身を挺して地球環境の悪化を訴えているように思えるのだが、読者の皆さんはどう感じるだろうか。ハチミツは今世紀最大のピンチを迎えていると言えまいか。
平成19年(2007年) 6月30日(第287号)
小紙連載がマスコミ全体に高く評価
ー偽ハチミツの実態が遂に暴き出されたー
事件の風化が狙い!?
違反企業の公表は三ヶ月後
これまで小紙「告発レポート疑惑のハチミツ業界」では、「偽ハチミツ」にまつわる協議会の疑惑・問題を二十七回、二年半に渡り連載してきた。
このほど、読売新聞の記事を契機にテレビ・雑誌など幅広いメディアでこの問題が取り上げられ、より多くの消費者に「偽ハチミツ」の実態が暴き出された。
「偽ハチミツ」であることを認識しながら「純粋ハチミツ」と表示するハチミツ業界。その存在を知りながら報告義務を怠り、消費者に情報を開示しない(社)全国はちみつ公正取引協議会。
意図的に消費者を欺いたハチミツ業界の行為は、「食の安全」を脅かし、信頼を損ねた点において、雪印や不二家の事件にも等しい消費者への裏切り行為である。業界ぐるみの隠蔽疑惑も持たれる。
雪印、不二家の事件では、消費者は商品の不買行為によって「NO」の意志を表した。しかし、協議会は「違反企業の公表は三ヶ月後」として現在に至っても違反企業、商品名について明らかにしていない。
こうした状況では、消費者はどのハチミツを買わないことが「NO」という意思表示に繋がるのか判断できない。
簡易な検査であれば一週間、詳しい検査でも二、三週間で結果が出るという。もっともらしい理由を付けて時間を稼げば、事件が風化し業界に与える影響は小さくなるだろう。こんな考えをもとに違反企業の情報開示を先延ばしにしているのであれば、協議会の対応は悪質極まりなく、反省の色も見られない。
トップの責任はどこへ?
謝罪しない野々垣会長
介護業界のコムスンと英会話学校のNOVA。どちらも利用者に迷惑をかけたことから、企業のトップである会長、社長が記者会見に出席し、自ら謝罪の言葉を口にしている。コムスンを傘下に持つグットウィルグループの折口雅博会長においては、連日テレビで謝罪を繰り返し、涙まで流した。
しかし、(社)全国はちみつ公正取引協議会の野々垣孝氏は記者会見に出席しないばかりか、現在においてもなお、会長名を付しての謝罪文、コメントなどを発表していない。協議会のホームページには責任者の名前のない謝罪文が空々しく掲載されているだけである。
一連の報道後に外部の有識者五名からなる第三者委員会を設置し、平成十八年度の定期検査を追加調査するということだが、それで問題が解決するわけではないだろう。
公取委OBが天下り、業界関係者だけで構成されている組織を改編して消費者団体を加えたり、違反企業をホームページで公表する規約改正などやることはまだまだあるはずだ。
ホームページでは
「今後、二度とこのような事態をおこさぬようにし、消費者の信頼回復に務めてまいりますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます」
などと訴えているが、野々垣会長の謝罪、辞任なしに消費者の信頼回復などできるのだろうか。
何よりもまず、食の安全を脅かし、消費者を欺き続けてきた一連の責任を野々垣会長自身がきちんと取ることが必要ではないだろうか。
「不買」でノーの意思表示を「公正」マークは「会員証」マーク
協議会加盟企業の商品には「公正取引マーク」が貼られている。これまで、「公正取引マーク」は安全・安心のマークとされてきたが、小紙で指摘してきたとおり、単なる協議会加盟の「会員証」の印でしかないことが明らかになった。
協議会に加盟している企業が製造・販売するすべての純粋ハチミツが「偽ハチミツ」という訳ではない。しかし、協議会が違反企業や商品名などを公表しない限り、消費者は「公正取引マーク」の貼られている商品を「偽ハチミツ」と見立て、購入しないことでしか、「NO」の意思表示を表すことができない。
悲しいかな「公正マーク」は会員証から「偽ハチミツ」の証(あかし)へと変貌したのである。
また、「公正取引マーク」の商品を買わないことは、優良企業の協議会脱退を促し、業界刷新に繋がる行為でもある。良識ある企業の皆さんには、協議会を脱退し新団体の設立に積極的に動き、消費者を正しい選択へと導くことを重ねてお願いしたい。
また、欧米やニュージーランドなどハチミツに対する歴史や造詣の深い国々と比べ、日本の消費者はハチミツに関する知識が不足がちであった。今回の報道を機に一人でも多くの消費者が純粋ハチミツとは何か、ハチミツの造詣は何かといったことに関心を持って頂ければと願ってやまない。
ハチミツは健康食品
安心・安全なハチミツを購入したい
ハチミツを購入する際、消費者はどんなことを意識しながら選んでいるのだろうか。ハチミツを利用し始めたきっかけ、ハチミツを健康食品と考えているのかといった消費者意識を窺い知る機会は、これまでほとんどなかった。
そんな中、「ミツバチ化学(第二五巻三号二〇〇四年一〇月)」に興味深い記事が掲載されていたので紹介したい。
東京農業大学(世田谷区桜ヶ丘)では、毎年十一月の大学祭(収穫祭)でさまざまな種類の国産ハチミツを来場者に販売している。大学祭に販売しているハチミツは品質の良さと安さから「農大ハチミツ」として定着している。毎年、販売所にはハチミツを買い求める行列ができ、数時間で完売するそうである。
そんな東京農業大学が、二〇〇一年に二百六人に対して、ハチミツに関する意識調査を実施した。
このアンケート結果によるとハチミツを利用し始めたきっかけとして、「美味しいから」、「健康に良いと聞いたから」がともに四十二パーセントで嗜好品としてのハチミツと健康食品としてのハチミツが購入時のきっかけになっていた。また、この設問を年齢別に集計したところ、年齢が高まるにつれて健康を理由に利用し始めた人が増えているという傾向が見られた。
ハチミツは健康に良いと思うかという設問に対しては、「健康に良いと思う」と答えた人は九十五パーセントに達しており、ハチミツイコール健康食品であるということは消費者の常識になっているようである。また、ハチミツ購入者の多くは普段から健康を意識していることも他の設問から窺われた。
購入時に注意する点としては「産地」二十七パーセント、「花の種類」二十五パーセント、「純度」二十一パーセントと上位を占め、「値段」十パーセント、「養蜂場」八パーセント、「気にしない」五パーセント、「販売店」二パーセントと続いた。ハチミツ購入時には値段よりも品質・味にこだわる姿勢がはっきりと現れている。
「農大ハチミツ」の購入に関しては、「美味しいから」という理由が二十八パーセントと最も多かったものの、「安心だから」二十一パーセント、「農大ブランド」だから十四パーセントと続いた。安全性を重要視する意見が三十五パーセントを占めたという結果は、市販されているハチミツへの不信感の裏返しとも取れる。
東京農業大学の学園祭でハチミツを購入していることから、一般の消費者よりもハチミツに対する関心の高い方々の意識を調査しているのだろう。しかし、ハチミツを健康食品として位置づけ、購入の際には値段よりも品質・安全性を重要視しているという結果には正直驚いた。
日本で流通するハチミツの九十パーセントを占める中国産ハチミツには、安全性・蜜質の問題、高熱処理による栄養素破壊、異性化糖の混入などが取り沙汰されている。
純粋ハチミツに人工甘味料が混入していたという一連の問題を機に、ハチミツ愛好家だけでなく一般消費者にも品質・安全を求める意識が広がれば、粗悪な偽ハチミツは市場に流通しづらくなるだろう。消費者意識の高まりを強く期待するところである。
しかしながら、スーパーマーケットやドラッグストアーには、一種類もしくは一ブランドのハチミツしか置かれていないことが多い。消費者意識のさらなる高まりに期待する一方で、消費者に選択肢が少ないことも事実である。そのカラクリはハチミツの流通にあるのだが、この話は別の機会に譲ることとしたい。
(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。 まとめ ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 5月31日(第286号)
「偽モノ」を「純粋」とウソで固めてン十年
−公正マークは単なる会員之証に過ぎない−
「読売新聞」の仰天記事
五月十四日付読売新聞朝刊の社会面に衝撃的な文字が並んだ。「『純粋はちみつ』加糖の疑い」、「検査の二割業界団体報告せず」、「公取委OB天下り、業者{利益のため}」、「公取委骨抜き」という具合、センセーショナルな見出しが目を引く。その後もテレビ、雑誌などに相次いで取り上げられた事から、小紙が告発してきた「社団法人・全国はちみつ公正取引協議会」(以下、協議会)を取り巻く問題は、広く全国民の知るところとなった。文字どおり蜂の巣をつつく騒ぎだ
小紙では二〇〇五年二月から二十六回に渡り、協議会を告発してきたが、ここで問題をもう一度整理してみることにしたい。
「純粋」が実は「偽モノ」
問題一
「純粋ハチミツ」に加糖が混入!
違反企業は七年間で述べ百四十一企業
協議会が二〇〇〇年から〇六年度にかけて会員企業の扱う商品、延べ六百十点を規約に基づき定期検査(年一回)した結果、百点に異性化糖(でんぷんを原料とした人口甘味料)、二〇点に水あめ類の混入を示す陽性反応が示されたという。協議会に加盟している企業が販売する「純粋ハチミツ」の二割が実は純粋ではなく、「偽ハチミツ」であった訳である。
小紙においては、これまで再三に渡り異性化糖や水あめを混入した「偽ハチミツ」が市場に出回っていることを指摘してきた。昨年十月に農林水産省から改善指示を受けたハチミツ業者が協議会加盟企業であった(違反発覚後に退会)という事実を持ち出すまでもなく、協議会に加盟する企業の中に「偽ハチミツ」を製造し、純粋ハチミツとして販売している業者が存在していることに確信を持っていたのである。
今回明らかとなった違反企業は、七年間で実に述べ百四十一の企業に及ぶ。述べ数のため繰り返し違反している企業もあるのだろうが、協議会に加盟している企業数は百六企業であるから、それを上回る数の違反企業が存在していることになる。
この数字には小紙も驚きを隠せないが、協議会会長である「アピ梶vの野々垣孝社長が小紙の取材に応じなかったのは、このためかと納得の数字でもある。
業者本位の考えから加糖ハチミツを純粋ハチミツとして販売し、消費者を欺いてきた罪が重いことは言うまでもない。多くのマスコミから取材の申し込みを受けていると思うが、野々垣氏には逃げず隠れず真摯な対応を願いたいものである。
「食の安全」を裏切った
問題二
違反企業を公取委に報告せず!
組織ぐるみの隠蔽工作か?
協議会の役割は不当表示の防止であり、規約では、違反企業に対して事情聴取など必要な調査を行い、注意文書を送ること。繰り返し違反した企業には警告し、警告の文書を公取委に報告することなどが定められている。
しかし、協議会は警告文書を公取委に報告していなかったばかりか、違反企業に対する事情聴取すら実施していなかったという。
読売新聞には、「厳しい対応を取ると、業者が次々退会して運営が成り立たなくなる」とのコメントが紹介されている。協議会の運営を優先し、意図的に公取委への報告を怠っていたことは間違いないようである。
協議会は不当表示の防止を目的に設立された団体のはずである。また、ハチミツには日本農林規格(JAS法)による基準がないため、事実上、協議会の規約が業界唯一の指標となっている。
不当表示を取り締まるはずの協議会が違反企業を黙認していたのでは、消費者は何を信用してハチミツを購入すればよいのか。消費者を欺き、食の安全を裏切った協議会の責任は重大である。
情報を公表しない協議会
問題三
違反企業・商品を公表せず!消費者に事情を開示せよ!
〇七年四月末、協議会には百六の企業が加盟しているが、二〇〇〇年から〇六年度までの七年間に渡る協議会の自主検査では、延べ百四十一の業者に対して注意文書が送られ、二十一の業者が警告を受けていたという。
しかし、協議会は違反企業の個別業者名や商品名を一切公表してこなかった。そればかりか協議会のホームページで公開されている事業報告書から違反業者の件数を削除し、消費者の目に触れないよう画策していたのである。
不当表示を防止する唯一の団体が違反業者の情報を公表しなければどこが公表するのか。一刻も早く企業名・商品名を消費者に公表し、食の安全を確保すべきである。
なお、協議会は五月十四日に緊急記者会見を開いたが、小紙には記者会見の開催を知らせてこなかった。小紙が協議会を告発する記事を二年以上に渡り掲載していることも、小紙の連絡先も十分ご承知のはずである。これが単なる連絡ミスなのか小紙を呼べば、大手マスコミの前で厳しい追及に晒されるかもしれないと躊躇したためなのかは分からない。
小紙にすればどちらでも良い事だが、外部からの指摘を聞き入れないという協議会の閉鎖的体質は、公取委への報告を怠り、消費者への情報を開示しなかったという行為になって現れている。協議会は組織の閉鎖性を強く認識し、情報公開を進めるべきである。
問題四
新たなチェック機関の設立を!
企業は新機関に加盟し、潔白の証明をせよ!
消費者を欺いていることを認識していながら、長年に渡り意図的に悪質な隠蔽工作を続けてきた協議会は、自らその役割を放棄したと言わざるを得ない。業界の自助努力に期待は持てず、協議会が自主規制団体として機能していないことは明白である。
消費者を欺き、真摯に取組む養蜂家・生産者を裏切った責任は重大である。会長、事務局長の辞任など目に見える形で責任を示さなければ消費者は納得しないだろう。
しかし、仮に代表者の顔が代わっても協議会自体がハチミツ業界関係者と公取委OBで組織されていることに変わりはない。違反を調べる側と調べられる側が同じという構造が続く限り、チェック機能が働くはずもない。
NPO法人や消費者団体など検査を実施できる新しいチェック機関の設立が望まれる。
そして、「今回の報道には迷惑している」、「当社のハチミツは百パーセント純粋ハチミツだ」という企業は、協議会を脱退し、新団体を設立・加入すべきである。
協議会が違反企業を明らかにし、除名・退会処分としなければ、「偽ハチミツ」を販売する業者も真摯に「純粋ハチミツ」を販売する業者も協議会に混在し続ける。何を基準に「純粋」を判断すればよいのか、消費者は混乱してしまう。
公正取引委員会のOBが天下り、不透明な処理を続けてきた協議会に加盟し続けることは、消費者から疑いの眼差しを浴び続けることを意味している。本当の「純粋ハチミツ」を製造・販売している業者は、協議会を退会し、新団体を設立することによって消費者の信頼を回復するべきである。
摩訶不思議な「公正」
問題五、
事務局長は公取委OB!
不透明な処理が慣例化!
一九六八年に設立された協議会では、八四年以降、現在の事務局長に至るまで、公正取引委員会(以下、公取委)のOB職員が協議会事務局長を歴任している。公取委は協議会の所管官庁であり、公取委が協議会の規約を承認していることから、公取委からの天下りは業界癒着の何ものでもない。
不純物の入った「偽ハチミツ」に対する公取委の排除命令は一九七九年を最後に二十七年間途絶えている。公取委OBである事務局長らによる不透明な内部処理により、不適正な表示が見逃されてきたためではないか。
天下った元役人が天下り先の企業・団体に手心を加えることは、周知の事実。道路公団の談合を例に出すまでもない。こうした人事を二十年以上も続けてきた組織に業界唯一の“自主検査”を実施する資格があるはずない。
話は逸れるが、今回の報道をきっかけに公取委の職員にも天下り先があることを初めて知った方も多いのではなかろうか。
天下り先に対しても公正な判断ができるのか。天下りを狙って手心を加えることはないのかなどと余計な心配をしてしまった。ともあれ、天下っても公正取引委員会とは、摩訶不思議な「公正」である。
野々垣・アピ社長よ、答えろ!
問題六、
組織ぐるみ、業界ぐるみの不当表示か?
野々垣氏への「疑惑」は消えない
読売新聞には「異性化糖などの混入について陽性反応が出た業者名を知るのは、事務局長(専務理事)と事務局員の二人に限られ、会長ら他の役員にも漏らされないのが“不文律”だった」と掲載されている。
果たしてこれは本当だろうか。この点に関し、弊社は読売新聞とは少々違う考えを持っている。
協議会の会長は、言わずと知れた業界最大手「潟Aピ」の社長・野々垣孝氏である。業界最大手の社長が業界商品の二十パーセントで起きている不当表示をまったく知らないことなどあり得るのだろうか。
逆に言えば、業界最大手の企業を無視して他企業が不正行為を行うことなど可能なのだろうか。「偽ハチミツ」の存在は業界内の“常識”だったはずである。
小紙には“不文律”を話すことで、不適正表示の問題を協議会内部の問題にすり替え、業界ぐるみの不正行為という「疑惑」から目を逸らそうという狙いがあったのでは、と感じられるのである。「疑惑」は一層深まったと言えよう。
野々垣氏がお忙しい身であることは重々承知している。スケジュールはこちらが合わせよう。野々垣氏よ。そろそろ、小紙の取材に応じ、この問題をはっきりさせる時が来たのではなかろうか。
(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 4月30日(第285号)
世界66ヶ国が幕張で国際ショー
〓〓次回には世界のハチミツと味くらべを〓〓
三月十三日から十六日までの四日間、千葉県・幕張メッセで世界六十六ヶ国の食品・飲料を一堂に集めたアジア環太平洋地域最大規模のフードトレードショー・第三十二回国際食品・飲料展「FOODEXJAPAN2007」が開催された。国内約七百、海外約千八百の企業が参加、飲食店関係者など連日二万人を越える人々が訪れ、四日間の来場者は延べ九万五千七百十九を数えた。FOODEXJAPANには中国企業も約百四十社参加し、このうちハチミツを専門に扱う企業は四社出展された。出展企業の一つである杭州常青蜂並広司の桜副総経理に中国のハチミツ事情について話を聞いた。
中国ではハチミツをどのように食しているのですか?
‐日本ではハチミツをパンに塗って食することが多いようですが、中国でパンに塗って食する人はほとんどいません。中国ではハチミツを水に溶かして飲んだり、スプーンに取ってそのままなめる事が多いです。
中国でも健康食品として認識されていますか?
‐日本と同じように中国でもハチミツは体に良い食べ物として知られています。スプーンですくってそのまま食べるのはそのためです。また、ハチミツはサプリメントとして販売されているので、ビタミンやミネラルなどの栄養補助食品としても広く普及してますし、糖分を控えなければならない糖尿病の患者の方が砂糖の代わりにハチミツを使った食事を取ることもあります。
中国ではいくらでハチミツを売っていますか?
‐一般の消費者が購入するハチミツは、五百グラム二百円前後で売っています。もちろん砂糖などは混じっていない純粋ハチミツの値段です。
貴社は何ヶ国にハチミツを輸出していますか。
‐日本をはじめ、韓国・ロシア・イギリス・ドイツ・スペイン・サウジアラビア・メキシコなど、十五カ国に輸出しています。
中国での養蜂産業について浙江省江山恒亮蜂産品有限公司の毛薫事長代理に話を聞いた。
若者の養蜂業離れ
中国の養蜂家は増えていますか?
‐中国全体で見ると海外への輸出が順調に伸びているので、引き続き成長が期待できると思います。しかし浙江省などいくつかの地域では、養蜂家の数が減ってきています。国内の経済発展が進み都市部の企業で働く方が収入が良いので、若者は出稼ぎに出てしまいます。体力的にもきつく賃金も安い養蜂業に携わる人は今後さらに減っていくかも知れません。
中国全体でも養蜂家の数は減っているのですか?
‐中国全土にどれだけの養蜂家がいるのかはわかりません。中国は広く人口も多いので養蜂家の数を把握できないのです。ただ、当社にハチミツを収めている養蜂家は年々減っています。また、中国から海外へ輸出されているハチミツは膨大な量になるはずですが、年間何万トンのハチミツが輸出されているのかわかりません。
中国産ハチミツの品質はどうですか?
‐二〇〇二年一月、ヨーロッパに輸出したハチミツから抗生物質が検出され、輸出禁止になったことを一つのきっかけに品質管理は徹底されるようになりました。また、〇六年からは日本でポジティブリスト制度が導入されたこともあり、一層厳しい品質が求められるようになりました。
世界のハチミツの現状
今回の国際食品・飲料展にはエルサルバドル・スイス・スペインなどハチミツ生産国として余り聞き慣れない国からもハチミツが出展され、なかには日本初上陸のハチミツもあった。その他にもアメリカ・ドイツ・カナダ・ニュージーランド・ブラジルなど、様々な国からハチミツが出展されており、中国だけでなく、世界の至る所で養蜂が行われていることを再確認した。現在、日本で中国産以外のハチミツを扱う店はハチミツ専門店とネットショップくらいしかないが、今後は中国だけでなく様々な国のハチミツが輸入され、店頭に並び、消費者の手に渡る機会が増えそうである。
次回のFOODEX JAPAN開催予定は、来年三月十一日から十四日の四期間となっている。今回お目にかかることは出来なかったが、次回こそは国内参加企業として、また岐阜県を代表する企業としてアピ株式会社、日本蜂蜜株式会社など(社)全国はちみつ公正取引協議会に加盟している企業にも出展して頂き、世界のハチミツと味比べをしてみたいものである。
蜜蜂からの新しい
贈り物「ビーポーレン」
蜜蜂のもたらす自然の恵みの一つとして「ビーポーレン」が注目されている。ビーポーレンとは英語のBee(蜂)とPoiien(花粉)からできた言葉で「蜜蜂花粉」などと訳される。蜜蜂は花粉を採取するとき、体内から分泌された酵素で固めた「花粉団子」を後ろから足につけて持ち帰る。この花粉団子は女王蜂の餌や蜜蜂が越冬するときの食料となるもので、様々な栄養素が豊富に含まれている。一粒がごま粒ほどの大きさの「花粉団子」は、十万個のから五百万個の花粉のかたまりで、十六種類のビタミン、二十種類のアミノ酸、十八種類の酵素、十六種類のミネラルなど約九十種の栄養素が含まれている。
「ビーポーレン」に注目
ハチミツと同じくビーポーレンも紀元前から食されてきたとされ、古代ギリシアの文献に記述が残ってる。しかし、近代学問として研究され始めたのは一九五〇年以降からと以外なほど歴史は浅い。九一年、アメリカのモーリス・M・チンテロー医学博士の研究報告では、アレルギー・喘息・花粉症・慢性副鼻腔炎などに効果があったとされている。また、脱感作(一度アレルギーになった状態から脱する作業)をもたらすので、花粉症の症状を軽減する効果あるともいわれている。ビーボーレンは商品によって花粉団子をそのまま瓶詰めしたもの、花粉団子をカプセルにいれたもの、花粉団子を固めて錠剤にしたものが販売されている。錠剤タイプには加熱処理を加えているものもあり注意が必要だが、栄養素や効果に差異はないようである。日本ではまだ馴染みのない食
品であるが、ニュージーランドやオーストラリアでは毎日の栄養補給として、欧米では、「パーフェクトフード」と呼ばれサプリメントの一つとして愛用されている。値段は一瓶五千円前後で、殺菌効果の高いマヌカハニーの二倍もする。品質の良くないビーボーレンを高く売る業者もいれば、品質の良いビーボーレンを安く売る業者もいるので、単純に値段だけでは判断できないが、中にはハチミツと同じようにどうしてこんなに安いのか疑いたくなるほど、極端に安いビーボーレンも販売されている。ハチミツ同様、きちんとした効能を得るためには信頼できるメーカーや販売店を探す事が欠かせない。
(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 3月31日(第284号)
トレーサビリティシステムの導入
〓〓安全管理に画期的前進〓〓
安全管理・一歩前進
これまで二回に渡り、中国産ハチミツの品質問題について述べてきた。こうした認識は食の安全を研究している専門家や行政機関だけでなく、ハチミツへの関心を一部の消費者も広く待ってきているが、欧米諸国と比べて日本のハチミツの歴史は浅く、一般消費者の知識はまだまだ不足しがちである。それでも近年ハチミツが健康食品として、一部の企業は中国産ハチミツの品質向上に向け取り組みを強化している。中国産ハチミツが抱える「抗生物質」と「異性化糖」の混入問題は、安全・安心なハチミツを輸入しようと努力している企業にとって、解決しなければならない課題として認識されてきている。そして問題解決の方策として期待されているのが「トレーサビグティシステム」による安全管理なのである。
トレーサビリティ
システムの導入
二○○三年十二月二十四日、BSE(牛海綿状脳症)による狂牛病問題からアメリカ産の牛肉及び牛肉加工品は、全面輸入停止となった。○四年十二月には「牛の固体識別の管理及び伝達に関する特別惜置法」が施工され、一頭ごとに付けれれたID(識別番号)によって牛の誕生、飼育、加工、出荷までの情報を認識することが出来るようになった。「トレーサビリテノノイ」とは英語のTrace(追跡)とAbiliy(できること)を組み合わせた言葉で、「生産履歴追跡」などと訳される。生産地‐(加工)工場‐流通‐販売までの工程を明らかにし、履歴情報を遡ることで商品の安全を確保・管理するシステムのことである。消費者は商品の原料生産段階まで履歴を確認する事で、「何時、何処で、誰が、何を、どのように」商品と関わったのか知ることが可能となり、安心して商品を購入する事ができるのである。ニュージーランドでは、既にハチミツにも「トレーサビリテイシステム」が導入されており、政府機関によって管理・運営されている。ハチミツの入ったドラム缶ごとにロットナンバーがふられており、商品にトラブルが生じた場合に対応できるシステムが出来上がっている。日本にも食の安全を確保するためにトレーサビリテイシステムを導入しようとする試みがある。実際にシステム導入にむけて動いている企業に取材した。
○ システム導入はいつからですか?
‐三年ほど前にトレーサビリテイシステムの導入に向けて動き始めました。大学の研究者や専門家と共同で中国への訪問を繰り返し、研究を重ねています。現在はいつ頃、どの地域で、どの花から採れたハチミツなのか、おおまかな追跡はできるようになりましたが、日本の消費者に満足して頂けるような精度の高いシステムを構築するまでには後二〜三年の時間が必要な状況です。
○ システム導入のきっかけは?
‐日本では蜜源が減少しており、今後、国産ハチミツを入手することは今まで以上に困難になると予想されています。良質なハチミツを安定して入手する必要からシステムの導入を決めました。また、二○○二年に中国産の輸入ハチミツから抗生物質が検出され、中国産ハチミツに対する消費者の不信感が非常に高まり、売り上げにも影響しました。消費者の信頼を回復するためにもシステムの導入は欠かせないものと考えています。
○ システム運営で苦労する点は?
‐システム運営には養蜂家の育成と精度の高いデータを収集することが必要です。中国は北京オリンピックや上海万博を前に国を挙げて様々な食品の管理を厳しくチェックしていますが、国が勧める国際的基準と生産者の意識には少なからずギャップがあります。また、当社では遼寧省や河南省で採れたハチミツをシステムの対象にしていますが、地方に行くと文字が書けず、意思疎通が思うように図れない養蜂家もいます。こうした状況の下で信頼の置けるデータを蓄積することは簡単ではありません。カナダやニュージーランドなどではシステムを軌道に乗せた企業もあるようですが、中国産ハチミツでシステムを確立した企業はまだないと思います。日本の消費者を納得させる事のできる精度の高いデータを集めるため、中国語が堪能で養蜂・ハチミツに精通した職員を常駐させ、徹底した管理を行うことが今後の課題です。
○ 日本と中国で養蜂の違いはありますか?
‐中国には日本から持ち込まれたミツバチも多く、養蜂の手法などに大きな差はありませんが、生産・販売の体系は少し異なります。日本では養蜂家と独自に契約してハチミツを購入することができますが、中国では養蜂家ではなく、養蜂家を束ねている「組長」からハチミツを購入することになります。輸入量は二十トンからなので「組長」の下にいる複数の養蜂家から集めたハチミツを輸入することになります。このため、すべての養蜂家のハチミツを追跡してデータを収集することは、日本と比べると困難な作業となります。
○ どのようなシステム利用方法を検討していますか?
‐二次元バーコードを商品ラベルに貼り付けることで、消費者が携帯電話で気軽に「いつ、どこで」採れたハチミツなのかといった情報と接することができればと考えています。〓〓
この企業では、システム導入に向けて相当な金額を投資している。トレーサビジテイシステム導入への道は険しいようだが、一日も早い実現を期待したい。
究極のトレーサビリティ
自家養蜂のススメ
ドイツの養蜂家は約八万戸と多いが、このうち養蜂を主な収入源としているのは約千戸、全体の一パーセント程度しかない。残りの多くは個人養蜂家で、自宅の庭やベランダに巣箱を置いて趣味としての養蜂を楽しんでいる人たちである。自分で飼育し、自分で採ったハチミツを食べる。言うならば究極のトレーサビリティがそこにはある。実は日本でも個人養蜂家を楽しむことは可能である。インターネットでは趣味の養蜂のために種養、巣箱、煉煙器、遠心分離機などがセットになった「養蜂キット」が販売されている。養蜂キットを販売している秋田屋本店に問い合わせた。
○ お値段は?
‐ 十三万千二百五十円です。
○ どれくらい売れていますか?
‐1年間に約十セット売れています。
○ 購入層は?
‐養蜂ははじめてという一般がほとんどで、女性よりも男性の方が多く購入されます。年齢は若い方からご年輩の方まで様々です。趣味として養蜂を楽しむために購入しているようです。
○ 採蜜できる量は?
‐採蜜時期は花が咲く春先から秋口にかけてですが、地域によって差があるので、はっきりとした採蜜量は分かりかねます。
○ 保健所や役場に届け出る必要は?
〓ミツバチの飼育届けを保健所などに提出する必要があるかもしれません。〓〓
養ほう振興法第三条によると「業としてみつばちの飼育を行う者(養蜂業者は都道府県知事に届出なければならないとされている。ミツバチはご近所の花壇からも蜜を採取するし、小さいお子さんがハチに刺される危険もあるので、住宅街であればトラブルを未然に防ぐためにも隣近所へ事前に話を通しておく必要があるだろう。出来上がったハチミツを近所に配れば養蜂への理解も得られやすいし、近所付き合いの潤滑油にもなる。個人的には仕事を生き甲斐としてきた団塊の世代の方々に定年後の新しい趣味として始めて頂きたい。高層マンションでの飼育は難しそうだが、田舎暮らしを始める人、郊外へ移り住む人にはぴったりの趣味ではなかろうか。新たに養蜂を始める事は蜜源を奪い合う事になるため、専業の養蜂家の中には趣味の養蜂を嫌う方もいるようである。しかし、趣味であっても養蜂に携わることで関心を持つ人が増えていけば、本物のハチミツに気が付くきっかけになる。また、ドイツのように国内養蜂業の衰退を防ぎ、活性化にも繋がるものと考える。養蜂キットの内容は次のとおりである。興味のある方はHP(http://www.akitayahonten.co.jp/goods/yoho/htmlにアクセスしてみてはいかがだろう。
○ ミツバチ一群(約一万五千匹)
○ 十枚用継箱‥一箱
○ 最高級空巣箱‥五枚
○ 大型煉煙器‥一個
○ アミラン面布‥一枚
○ いろは巣礎‥十枚
○ 金具付組立巣枠‥十組
○ 円形蜜櫨し‥一個
○ 蜂ブラシ‥一本
○ 日本式蜜刀‥一本
○ 軽便固定式分離機‥一台
○ ハイブツール‥一個
○ 玉 寵‥五個
○ 分割板‥一枚
○ 歯車埋線器‥一個
○ ゴム手袋・二双
○ 養蜂の手引き書‥一冊
(取材・調査・本紙ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 2月28日(第283号)
「発掘〓あるある大辞典」で絶賛の坑殺菌力!
信じていいのか、悪いのか!?
またも中国産ハチミ
ツから残留抗生物質
中国産ハチミツからの残留抗生物質検出が後を絶たない。検出された商品は全て厚生労働省が廃棄、積戻しを指示しているので日本国で流通する事は無いが、その一部を列記する。
一、昨年五月、中国から横浜に陸揚げされたローヤルゼリー加工品(輸入元:正和薬品株式会社)からオキシテトラサイクリン〇・一〇PPM、テトラサイクリン(注一)〇・〇二PPMが検出された。
二、昨年八月、中国河南省から名古屋に陸揚げされたハチミツ(輸入元:八木通商株式会社)からクロラムフェニコール(注二)〇・〇〇五PPMが検出された。
三、昨年十月、中国の門司(輸出元:内外交易有限会社)から日本へ輸出予定のハチミツから合成抗菌剤AHD〇・〇〇二PPMが検出された。
四、昨年十一月、中国から大阪に陸揚げされたローヤルゼリー加工品(輸入元:隆泰貿易株式会社)からクロラムフェニコール〇・〇〇八PPMが検出された。
(注一)
テトラサイクリン:ペニシリンと同じく古くから使用されている代表的な抗生物質。細菌のタンパク質合成を阻害して発育・増殖を抑える。オキシテトラサイクリンは同系列の抗生物質。
(注二)
クロラムフェニコール:コレラや腸チフスなどの感染症治療に用いられる抗生物質。再生不良性貧血による骨髄損傷など人体への重大な副作用が指摘されている。〓〓
相次ぐ残留抗生物質の検出を重く受け止めた厚生労働省は、昨年八月二十九日付けで中国から輸入されるハチミツとその加工製品のサンプリング検査を五十パーセントに引き上げる事を決定した。ハチミツに関する食の安全を確保するためには水際での防止策をさらに強める必要があると判断したわけである。
変わる中国のハチミツ事情
中国では一年間に全世界の約三割を占める二十七万トンのハチミツが採取されているが、一人当たりのハチミツ消費量は百グラムと日本の三分の一ほどしかない。これまで国内でハチミツはあまり消費されてこなかった。しかし、経済が発展して生活水準が上昇するにつれて娯楽やスポーツ、ファツションだけでなく健康に対する関心も高まっており、富裕層を中心とした消費者からは品質の良いハチミツを求める声が挙がっている。こうした中国国内での需要増加に直面した養蜂家は、日本へ輸出するための安いハチミツ作りによって高く売れる品質の良いハチミツ作りが阻害されている、と不満を抱いているといわれている。安くて低品質と言われる中国産ハチミツは、「精製ハチミツ」に代表される日本の特異なハチミツ事情によって引き起こされた側面を持っているため、これまでも中国から日本へは安いハチミツが大量に輸出されてきた。今後、中国国内で品質の良いハチミツの需要が高まった場合、日本へは欧米や中国国内向けに出荷することの出来ない、より低品質のハチミツしか輸出されなくなるかもしれない。
江蘇省、昨年一月から十月
のハチミツ輸出が大幅減
中国江蘇省の税関は、昨年一月から十月までのハチミツ輸出量が一万二千百七十三万トン、輸出額は千六百三十九万ドルと発表した。これは輸出量で対前年同月期三十九パーセント減、輸出額で対前年同月期十四パーセント減という大幅な減少であった。輸出量に比べて輸出額の減少幅が少ないのは、生産・輸出業者の生産コストが増加していたためである。江蘇省の主な輸出先は日本とアメリカであるが、日本は昨年五月末から輸入食品に対する残留農薬を規制する「ボジティプリスト制度」を実施している。これにより食品一キログラムあたりの農薬・化学物質残留量が厳しく定められたたため、基準に満たない輸出を見遅られた。ハチミツが輸出量の減少に繋がったのだろう。また、アメリカは中国産ハチミツを対象に反ダンピング調査を実施中であり、こうした動き
に対応できなかったハチミツ業者は輸出を控えざるを得なかった。それにしても三十九パーセント減とは驚きの数字である。これまで中国から農薬や化学物質の含まれたハチミツがいかに多く輸出されていたかが現れているのではなかろうか。「中国は貧しくて農薬を買えないから野菜や家畜は無農薬で育てている」などという「安全神話」は遠い遠い昔の無責任な話に過ぎない。中国のずさんなハチミツ事情が改めて証明されると共にこうしたハチミツを輸入していた業界のモラルも問われる出来事と言えよう。
ポジティプリスト制度とは
ポジティプリスト制度とは、食品衛生法に基づき平成十八年五月二十九日から導入された比較的新しい制度で、食品中に残留基準の設定されていない農薬、動物用医薬品及び資料添加物(以下、残留物質)が残留する生鮮食品、及び加工食品を含むすべての食品の製造・加工・販売などを原則禁止する制度である。七百九十九種類の残留物質が制度の対象となっており、昨年八月と十一月にハチミツ及びローヤルゼリー加工食品から検出されたクロラムフェニコールなど十五種類は一切の残留を認めない「不検出」基準に該当している。なお、六十五種類の残留物質は人の健康を損なう恐れの無いことが明らかな事から、制度の対象外となっている。江蘇省でハチミツ輸出量が激減していることをみると、一定の基準に達していない安全性に問題のある食品の輸出を自制させ
る効果は期待できそうである。ポジティプリスト制度を管轄する厚生労働省医薬食品局食品安全部によると同じ商品から同じ残留物質が繰り返し検出された場合は、「検査命令」指示や食品衛生法に基づく罰則を適用するとのこと。「検査命令」とは該当食品を扱うすべての業者に対して該当残留物質の検出検査を実施させるものである。しかし、この制度は「食の安全」の観点から生産過程での適正な農薬・化学物質の使用を目的としており、残留物質の分析を食品事業者に義務づけるものではない。また、食品すべてを検査・分析することは物理的に不可能であることから、制度によって「食の安全」をすべて担保することはできない。日本の消費者が安心・安全の「天然ハチミツ」を享受するには、ポジティプリスト制度などの国による規制だけではなく、生産者との信頼
関係構築を中心とした業界を挙げた取り組みが必要だ。
一月十日、不二家さいたま工場で消費期限の切れた牛乳を使用してシュークリームを製造していた事が判明した。その後も消費期限切れのリンゴを使用してアップルパイを製造していたことや食品衛生法の基準を超える細菌が検出されるなど次々に違反事実が明らかとなった。同社社長が引責辞任にするに至ったが、現在も混乱は続いており、営業再開の目処は未だ立っていない。二〇〇〇年六月から七月に起きた雪印食品株の集団食中毒事件も国民的関心を呼び、同社は廃業・解散となった。消費者は「食の安全」に対して厳しい目を注ぎ続けている。ハチミツ業界はこれを他山の石とすべきである。
あの「発掘‐あるある大辞
典」でも絶賛の抗殺菌力
一月七日にフジテレビ系列で放送された人気健康番組「発掘‐あるある大辞典U」で納豆を扱った番組中の実験データや研究者の証言が捏造されていたとして大きな問題となっている。実は数年前、同番組でハチミツの効能について取り上げられた事がある。次の三点である。
一、食中毒菌O157を殺菌
アカシア、レンゲなどのハチミツを溶かした水溶液にO157菌を入れて菌の繁殖状況を計測した結果、すべてのハチミツがO157菌を殺菌した。
二、虫歯原因菌・ミュータンス菌を殺菌
アカシア、レンゲなど数種類のハチミツを溶かした水溶液にミュータンス菌を入れて菌の活動状況を調べた結果、アカシア、レンゲ、オレンジ、ユーカリ、ローズマリーの五種類のハチミツが菌を半減させ、マヌカ、クローバー、蕎麦ハチミツは菌の活動を停止させた。
三、グルコン酸の力
ハチミツに含まれるグルコン酸は、ハチミツのPH(ペーハー)を下げて殺菌力を高める。また、ビフイズス菌を増やす効果も発見された。
こうした効能は玉川大学ミツバチ化学研究施設やニュージーランドのワイカト大学でも確認されており、実験効果に間違いないと思われる。しかし、番組の中では純粋ハチミツを推奨しただけで、「純粋」と「天然」の違いについては触れられておらず、視聴者に「特異な日本のハチミツ事情」が伝えられなかったことは残念である。
(取材・調査、本紙ハチミツ取材班。とジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 1月31日(第282号)
業者よ、業界よ、安ければいいのか!
すべて日本側に責任がある安い中国産
中国産ハチミツには抗生物質の残留、糖の混入、蜜質が劣るといった不安や問題がつきまとう。消費者の中には「中国産ハチミツイコール安くて品質の悪いハチミツ」というイメージを抱いている人もすくなくない。前号で日本に流通しているハチミツの約九十パーセントは中国から輸入されたもので、そのうちの七十パーセントから八十パーセントはハチミツから色、臭い、栄養素までも取り除いた「精製ハチミツ」と呼ばれる液糖として菓子や飲料の甘味料に使用されていることを述べた。「精製ハチミツ」はテーブルハニー(食卓で使われるハチミツ)の三倍から四倍の量が流通しているが、その単価は安い。販売額を比べるとテーブハニーの方が三倍から四倍多いと言われており、流通量と販売額は逆転してしまう。業者、企業にとって、テーブルハニーよりも格段に安く取引される「精製ハチミツ」で利益を確保するためには、品質や安全性よりもいかに安いハチミツを入手するかが重要になってくる。そこで重宝されるのが安くて大量に採れる中国産ハチミツなのである。実際に中国産ハチミツの輸入に携わった経験のある元商社マンは、
「中国の生産者の利益と一致してはいたが、一時期、ハチミツであれば何でも良い。とにかく安くて大量のハチミツを確保する事に奔走していた」
と当時を振り返る。
中国産ハチミツの一キログラム当たりの輸入量単価は、百五十円と三十ヶ国以上ある日本のハチミツ輸入相手国の中で圧倒的に安い。最も高い国はベルギーで一キログラム二千三百円、ついで北朝鮮二千百円、ギリシァ千六百円と続く。中国の次に輸入量の多いアルゼンチンは一キログラム三百二十円、カナダは四百七十円、ニュージーランドは九百八十円である。輸入単価の高いハチミツを「精製はちみつ」に加工しては採算が合わない。必然的にほとんどの「精製ハチミツ」は安い中国産ハチミツから作られることとなる。
消費者無視の技術指導
日本で流通する中国産ハチミツが「精製ハチミツ」として使用されていることと消費者が「中国産イコール低品質」というイメージを抱く事には大きな関係がある。中国の養蜂は、「精製ハチミツ」を販売する事で利益を挙げている日本の商社や企業によって、「天然・品質・健康」を重視する用法ではなく、「安く・確実・大量」に採れる事を重視した用法へ歪められてしまったのである。日本の商社や企業の多くは「精製ハチミツ」として利益を得るため、品質や安全性よりも採算性を重視した養蜂を中国の養蜂家に求めた。日本で「精製ハチミツ」に加工するのだから品質は関係ないと「ハチミツであれば何でも良い」「大量に集める事が大事」と消費者を無視した考えのもと、安く大量に採蜜することを優先したのである。中国の養蜂家に対する技術指導も採蜜コストを下げることに特化したもので、安全で品質の良いハチミツ作りに取り組んでこなかった。中国の養蜂家は安いハチミツしか買ってもらえないため、コストを掛けて独自に品質の良いハチミツを作ることすらできず、安いハチミツを作らざるを得なかった。「精製ハチミツ」に依存する日本の特異なハチミツ事情が「中国イコール低品質」というイメージを生み出してしまったと言えよう。
良品を選ぶことが大切
今でこそ中国は世界の工場として日本や欧米の企業が進出し、経済成長率は毎年二桁近い高い伸びを示している。二〇〇六年の貿易黒字は千七百億ドルを超え、世界第二位の外貨準備高を誇るまでになった。二〇〇八年には北京オリンピック、二〇一〇年には上海万博といったビックイベントを控えており、都市部を中心とした開発は目覚しい。しかし、農村地域との経済格差が指摘されているように山間部には今も広大な蜜源が存在している。中国の採蜜量は二十七万トン、アメリカの一・五倍、日本の百二十倍と桁違いに多い。中国との独自ルートを開拓し、高度な技術指導を提供することで高品質な中国産ハチミツの入手に尽力している日本の企業・養蜂家も存在する。企業努力によって高品質のハチミツが採れる条件は備わっているのである。すべての中国産ハチミツの品質が劣っている訳では決してない。大切なのは確かな品質を提供している商品をきちんと選ぶことである。ドイツでは、ハチミツに含まれる酵素の比率によって一級品から八級品までランク付されている。そして最も品質の高い一級品は、ほとんどドイツ国内で流通する。最良の天然ハチミツを安心して供給することができるから消費者も多い。ドイツの年間一人当たりのハチミツ消費量は千五百グラムで世界一だ。さて、一キログラム三百九十八円で売られている中国産ハチミツは何級品のハチミツなのだろう。
蜂の伝染病とは
あまり知られてないが、牛には狂牛病、鳥にはインフルエンザがあるように蜂にも腐蛆病という伝染病がある。腐蛆病は成虫が運んできた餌などに付着した芽胞性大桿菌は熱と科学殺菌剤に強い特徴があり、芽胞状態だと数十年生きつづける。感染すると一匹の幼虫に一億個の細菌が発生すると言われるほど伝染性が強く、放っておくと他の巣群にも感染してしまう。成虫に影響を与える事はないが、感染した幼虫は腐敗してしまう。腐蛆病を発生した後に薬剤散布すれば、巣箱、蜂、蜜のすべてが薬に侵されてしまい、商品価値はなくなってしまう。ひとたび感染すると発生後の対応が出来ないため、巣箱は全滅することになる。腐蛆病はアピテンと呼ばれるマクロライド系ミロサマイシンを含有する抗生物質を使用することで予防できるが、採取を禁止している休薬期間を守らずに採蜜するとハチミツに抗生物質が残留してしまう。食品から抗生物質を摂取した際に最も怖いのは、抗生物質に対する抵抗力(薬剤耐性)が人の体内に作り出されてしまう事である。薬剤耐性が作り出されると治療の際に抗生物質を使用しても既に耐性ができ上がっているため、抗生物質が有効に機能せず、治療そのものに悪影響を及ぼす事になる。
中国産ハチミツから
抗生物質
二〇〇二年四月、厚生労働省は輸入ハチミツのモニタリング検査を実施した。四月八日、二十六日に実施した二回の検査では、中国産ハチミツから抗生物質・ストレプトマイシンが〇・一七PPM、〇・八PPMずつ検出された。厚生労働省食品保険監視安全課は、食品衛生法第七条に違反するとして検査対象の全量(四十・六トン)に対して廃棄または積戻しの指示を出した。
(注)
PPMは、百万分の一をあらわす単位。
ストレプトマイシンは、一般に結核治療に用いられる抗生物質だが、腐蛆病を予防するために使われ、ハチミツに残留したのだろう。通常、ストレプトマイシンは筋肉注射によって投与される抗生物質であり、口から投与される抗生物質であり、口から投与すると副難聴や肝機能障害といった副作用を引き起こす。ストレプトマイシンの残留したハチミツを食べたからといってすぐに副作用を起こすわけではないが、中国での養蜂のずさんさ、食の安全に対する意識の低さが窺われるできごとである。
EUは全面輸入禁止、
だが日本は
輸入継続の不思議
厚生労働省のモニタリング検査は、二〇〇一年にEU(欧州連合)に輸入された中国産ハチミツから基準値を超える抗生物質が検出され、EUが中国産蓄水産物の輸入禁止処置を実施したことを受けて実施されたものであった。EUは抗生物質検出に対応するため、二〇〇二年から二〇〇五年までの三年間に渡り中国産ハチミツの全面輸入禁止処置を継続し、アメリカも一時期、中国産ハチミツの輸入を禁止した。日本でも輸入禁止の動きが見られたが結局、日本が中国産ハチミツの輸入を禁止することはなかった。それどころか抗生物質を検出した最新式の検査機を使った検査を止めて、抗生物質の検出されにくい以前の検査に戻すという不可解な対応を取ったのである。輸入禁止が回避されたことについて、ハチミツ業界関係者は「抗生物質の事前検査の徹底とサンプル検査から全量検査へと切り替えた『水際作戦』が功を奉した。一時期、ハチミツの需要は減少したが、業界のすばやい対応で消費者の不安が払拭された」と述べている。しかし、この時期、中国産ハチミツに対する消費者の不安が増大したため、国産ハチミツの需要が高まり、国産ハチミツの値段が高騰して入手困難になった。「水際作戦によって消費者の不安が払拭されたから、中国産ハチミツの輸入禁止が見送られた」とする見解は必ずしも当を得ていない。
業界はパニックに!?
なぜ日本では輸入禁止が実施されなかったのだろうか。日本国内で消費されるハチミツの九十パーセント近くを占めている中国産ハチミツを輸入禁止にすれば、ハチミツ業界に与える影響は計り知れない。「精製ハチミツ」を製造している企業などは、多くのハチミツを中国からの輸入に頼っている。中国の次に安いアルゼンチンのハチミツでさえ中国の二倍の単価である。仮に全面輸入禁止となった場合、中国以外の国から輸入しても採算は合わないだろう。EUと同じく輸入再開までに三年も掛かれば、工場はストップし、業界は大打撃を受ける。「精製ハチミツ」を売らんがため、消費者を無視して異常なまでに中国に偏重した業界構造が日本のハチミツ市場・食の安全を歪めている。
(取材・調査、ハチミツ取材班、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成19年(2007年) 1月 1日(第281号)
日本は中国産ハチミツの独占市場
なんと「日本の消費の90%」の現状!
二〇〇五年、日本に輸入されたハチミツは四万七千三十六トン。国内で生産されたハチミツは二千二百十一トン。合計四万九千二百四十七トンのハチミツが流通された。
最大の輸入相手国は中国で四万一千トンと圧倒的に多く、次いでアルゼンチンの千百トン、カナダ四百八十トン、ニュージーランド四百五十トン、アメリカ二百二十トンとなっている。
日本で消費されるハチミツのうち、実に九十五パーセントは海外から輸入されているものであり、輸入されたハチミツのうち中国産ハチミツの占める割合は九十パーセントを超えている。日本で流通しているハチミツはほとんど中国で採れたハチミツだ。
ハチミツ主要生産国の年間生産量は、中国がもっとも多くて二十七万トン、次いでアメリカの十九万トン、アルゼンチン八万五千トン、トルコ七万五千トンと続く。そして年間輸出量は、中国とアルゼンチンがほぼ同じ八万トンで最も多く、アメリカ六万八千トン、メキシコ三万五千トンと続き、年間輸入量は、アメリカとドイツがほぼ同じで十万トン、次いで日本四万七千トン、イギリス三万トンと続く。
国内生産量が二千三百トンほどしかない日本は、世界でも有数のハチミツ輸入大国であり、国内消費のほとんどを外国産ハチミツに依存している。
ハチミツ輸入大国
ニッポンの不思議
ハチミツ輸入大国の日本であるが、年間一人当たりのハチミツ消費量はニュージーランドやドイツの五分の一程度に過ぎない。主要国の年間一人当たりのハチミツ消費量は、ニュージーランドとドイツが最も多く千五百グラム、次いでオーストラリアとイギリスが千グラム、カナダ、イギリス、アメリカが九百グラムで日本は三百グラムと言われている。
一人当たりの年間消費量の違いには、その国の食文化や、ハチミツの歴史が影響しているわけであるが、日本の年間消費量が少ないことには、とあるハチミツ業界の事情が影響している。
なぜ、年間四万七千トンものハチミツを輸入している日本の一人当たりの年間消費量が三百グラム程度しかないのだろうか?実は日本に輸入されたハチミツの用途は他の国とはまったく違っているのである。
ハチミツは日本でどのように消費されているのだろう。すぐに思い付くのは、ホットケーキや食パンに塗ったり、ヨーグルトに混ぜたり、砂糖の代わりに紅茶に入れるといったところだろうか。
このように家庭の食卓や料理の調味料として使われるハチミツは、俗にテーブルハニーとよばれる。多くの消費者は輸入されたハチミツはすべてテーブルハニーとして消費されていると思ってはいないだろうか。
確かに国産のハチミツはほとんどテーブルハニーとして消費される。しかし、輸入ハチミツのうちテーブルハニーとして消費されるハチミツは輸入量のわずか二十パーセントから三十パーセントに過ぎない。実は残りの七十パーセントから八十パーセントの輸入ハチミツは「精製ハチミツ」に加工され、菓子、飲料などの甘味料として利用されているのである。
臭い・色・栄養素が取り
除かれた「精製ハチミツ」
平成十四年十月八日、公正取引委員会はハチミツ業界の自主団体である社団法人全国ハチミツ公正取引協議会から申請を受けて「ハチミツ類の表示に関する公正競争規約」を変更した。この際、これまで「脱臭・脱色ハチミツ」と呼ばれていた雑蜜を規約第二条(二)で「はちみつから臭い、色等を取り除いたものを『精製ハチミツ』とする」と定義づけた。
しかし、この「精製ハチミツ」なる品物は世界中どこを探しても日本だけにしか存在しない『ハチミツ』なのである。
「精製ハチミツ」と聞くと何やら品質を良くしたハチミツのように思われるが、臭いや色を取り除く行程でビタミンやミネラルなどの栄養素や殺菌力等も一緒に除去されてしまったハチミツ、否、「液糖」のようなもの(?)なのである。当然ながら、「精製ハチミツ」から天然ハチミツが本来持っている様々な効用を期待することはできない。
「精製ハチミツ」について、「ハチミツと同じ単糖類であることに変わりはなく、体内で分解せずに吸収する事ができるので糖分としてのハチミツの良さは失われていない」と強弁する業者もいるが、脱臭・脱色されて栄養素も抜け落ちたものを『ハチミツ』と呼称することに対して、「色や匂いと一緒に栄養分も取り除かれていることを、(社)全国はちみつ公正取引協議会は『ハチミツ』と認めているが、『ハチミツ』として取り扱うことには違和感を覚える」と否定的な見解を示す協議会加盟企業も少なくない。
ハチミツ業界によるハチミツ
業界のための規約変更
同協議会が、「精製ハチミツ」に規約変更した理由は、「脱臭・脱色ハチミツ」の持つ悪いイメージを払拭することだけではない。規約変更にはもっと大きな別の狙いがあったのである。それは、規約第二条で「精製ハチミツ」を「はちみつ類」に加えたことである。
変更前の規約では「脱臭・脱色はちみつ」は「はちみつ類」に含まれていなかった。このため、成分表示欄に「脱臭・脱色ハチミツ」と表記された商品は、商品名に「はちみつ」文言を使うことはできなかった。
しかし、規約変更で「精製ハチミツ」が「はちみつ類」に含まれたことによって、成分表示欄に「精製ハチミツ」と表記されている商品は、表示違反になることなく堂々と商品名に「はちみつ」と使うことが出来るようになったのである。これによって「はちみつ○○」、「△△はちみつ」といった商品が販売され、「精製ハチミツ」の需要は増加した。
しかし、規約変更前の「脱臭・脱色ハチミツ」と規約変更後の「精製ハチミツ」は、同じ『ハチミツ』である。二つの『ハチミツ』に違いはない。二つとも日本にしか存在しない『ハチミツ』である。規約は公正取引委員会によって変更されてはいるが、規約変更を申し立てたのはハチミツ業界の自主団体(社)全国はちみつ公正取引協議会である。消費者が規約変更を要求したことはなく、あるのはハチミツ業界の都合だけである。
規約変更によって、「精製ハチミツ」を製造・販売する業者にとっては販路拡大・売上増・商品価値の高上につながり、使用する菓子・飲料メーカーにとっては「はちみつ」を商品名に使って消費者にアピールすることができるメリットが生まれた。「精製ハチミツ」の売り手と買い手の利益、両者の思惑が一致した規約変更だったと言える。そこからは消費者をまったく無視した企業の傲慢さしか見えてこない。
うまみ≠ヘ一部の
企業だけが独占
規約変更は「精製ハチミツ」を製造・販売する業者にとって、販路拡大・売上増といううまみ≠もたらしたが、このうまみ≠ヘハチミツ業界全体で享受しているわけはない。
「精製ハチミツ」を作り出すには高度な技術が必要で、専用の精製プラントがなければ製造することはできない。そして精製プラントを所有している企業は、アピ株式会社、日本蜂蜜株式会社、日新蜂蜜株式会社など一部の企業に限られている。精製プラントを持っていない企業がうまみ≠享受することはない。
アピ株式会社は言わずと知れた(社)全国はちみつ公正取引協議会会長・野々垣孝氏が経営する会社である。日本蜂蜜株式会社は同協議会副会長・木方将文氏経営する会社、日新蜂蜜株式会社は同協議会理事・田中正道氏が経営する会社である。
規約変更の『からくり』が透けて見えるのは小生だけだろうか。
規約第二条
この規約において「はちみつ類」とは、はちみつ、精製はちみつ、加糖はちみつ及び巣はちみつをいう
(取材・調査・ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成18年(2006年)11月30日(第280号)
協議会加盟「ボーソーハチミツ」の暴走
「純粋」ハチミツに異性加糖の混入発覚
「ボーソーハチミツ」
が不適正表示
十月六日、農林水産省は「ボーソーハチミツ株式会社(本社 東京都江戸川区興宮町十九番地四号)が販売するハチミツ及びハチミツ加工品に不正表示が確認された」と発表した。事件の経過は次のとおりである。独立行政法人・農林水産消費技術センターは、食品表示監視業務の一環として平成十七年度に市販されているハチミツ及びハチミツ加工品の買い上げ検査をした。その結果ボーソーハチミツ株式会社が製造販売するハチミツに不適正表示の疑義が生じたため、平成十八年七月二十八日から九月八日までの間に、関東農政局及び独立行政法人農林水産消費技術センターが工場に立ち入り検査を実施し、
1 ハチミツ製品の原材料に異性化糖を最大で約二割使用しているにも関わらず、これらの原材料表示を行わないで、あたかもハチミツのみを原材料とした純粋なハチミツであるかのように、商品名として、「純粋」と冠した表示をおこなっていた八品目の商品を、少なくとも平成十六年十月から平成十八年七月までの間に七百五十二トン販売していたこと。
2 ハチミツ加工品の原材料にハチミツと同等量の異性化糖を使用しているにも関わらず、これの原材料表示を行わず、あたかもハチミツを主な原材料としている商品であるかのように表示した四十三品目の商品を、少なくとも平成十六年四月から平成十八年七月までの間に五百三十六トンを販売していたこと。
3 ボーソーハチミツ株式会社は、異性化糖を商品の原材料に使用していることを表示せずに販売する事が不適正な行為である事を認識していたにも関わらず、不適正のまま製造し、販売していたこと。
4 また、1と同様の原材料を使用しているにも関わらず、商品名として「純粋」と冠した表示をおこなっていた二品目の商品を自社の子会社であるピーシー株式会社(所在地 千葉県千葉市緑区辺田町六十番地四)を名目上の販売者として、少なくとも平成十六年十月から平成十八年七月までの間に五トン販売していたこと
などが確認された。
全国はちみつ公正取引協
議会も責任を問われる〓
(プレスリーリース抜粋)異性化糖の混入が確認された品目は、全部で実に五十一品。販売期間は約二年、販売量は合計千二百九十トンにものぼる。これらの数字は今回の検査を通して確認できた期間と量である。古い商品は保管されておらず物理的に検査できなかっただけで、実際には二年以上前から異性化糖を混入させたハチミツを「純粋」ハチミツとして販売していた可能性は否定できない。「純粋」ハチミツに混入されていた異性化糖の割合は、多いもので約二十パーセント、ハチミツ加工品ではハチミツと同等量というから五十パーセントにもなる。こうした商品を「純粋」として販売されては消費者はたまったものではない。違反を犯した企業は、全国はちみつ公正取引協議会の会員である。チェック機能が働かず二年もの間、違反を放置していた協議会も違反企業と同等に厳しく問われるものである。
ボーソーハチミツ株式会社は、一九六三年、「房総養蜂園株式会社」として創立。七〇年、全日本はちみつ協同組合に創立加入、同年全国はちみつ公正取引協議会会員。二〇〇四年一月社名を「ボーソーハチミツ株式会社」に変更。「ハニーレモン」を主力商品として、全国に営業展開。本社(江戸川区)の他に仙台、大阪、名古屋に営業所を持ち、千葉市緑区に第一・第二工場を有する大手企業である。同社のホームページには、同社の基本姿勢として「ハチミツのことなら、おまかせを。私たちは、ミツバチと共に生活をし、自然界がもたらしてくれる豊かな恵みとその驚異の源に感動し、これを研究し、商品として開発してまいりました。『確かな品質と信頼』をモットーに、ハチミツ及びハチミツのアプライド商品をむしろ多く商品提供するメーカーとして、今後も穏やかな暮らしに役立つ製品作りを心がけてまいりたいと思います」と謳われているが、今となっては何とも虚しく聞こえてくる。
同社の所謂「純粋ハチミツ」はインターネットでも販売されている。瓶詰めされた商品の写真の脇に「栄養豊富な純粋はちみつ。純粋はちみつは蜂蜜が花から採取した栄養豊富な純粋優良蜂蜜」と商品説明されている。インターネットを通じて購入する消費者は、商品を実際に手に取る事が出来ないためネット上の写真や商品説明を参考に購入せざるを得ない。ハチミツをインターネットで購入する人は、おそらくスーパーやドラッグストアで購入する消費者と比べ、ハチミツに対するこだわりを強く持っている消費者であろう。購入者はインターネットで売られている数多くの様々なハチミツの中から選びに選んで購入した「純粋」ハチミツが異性化糖の混入したまがい物のハチミツとは夢にも思わなかっただろう。
農林水産省の見解とは
今回の検査について、農林水産省・安全局表示・規格課に問い合わせた。
食品表示監視業務とは〓〓
多種多様な商品の食品を試買検査し、ラベル等に適正な表示がおこなわれているか調べる業務です。
年間、何品目の商品を調べるのですか〓〓
およそ五千件です
今回、ハチミツは何品目試験検査されたのですか〓〓
はっきりとした数ではありませんが、四十品目くらいだと思います。
不適正表示はどうして判明したのですか〓〓
試買検査をおこなった結果、表示されている原材料に含まれていないものの混入が確認されました。
どのような検査をおこなったのですか〓〓
「炭素安定同位対比法」という検査方法を用いたところ、異性化糖の混入が確認されました。
異性化糖はどの段階で混入されたのですか〓〓
ハチミツの製造工場に立ち入り検査を実施した結果、ハチミツを瓶詰めする工程で異性化糖が混入されていたようです。
ハチミツの不適正表示はこれまでも頻繁にあった違反なのですか〓〓
ハチミツに対する異性化糖の混入は、最近になってようやく検査できるようになったので、これまで余り確認されていません。
「十分反省している」
今回の不適正表示について、ボーソーハチミツ株式会社に問い合わせた。
不適切表示をしたきっかけは〓〓
ハチミツ販売業者の末端で起きている価格競争が主な原因です。異性化糖はハチミツよりも原材料費が安いので、異性化糖を混ぜるとその分だけ安いハチミツができるのです。また、(異性化糖は加熱すると着色するので)ハチミツの色の調整にも使っていました。
再発防止策は〓〓
品質管理に万全を期すため、製品表示を確認する部署を新たに立ち上げました。今後このようなことのないよう十分注意いたします。
不適正表示を始めたのはいつから〓〓
農林水産省から発表のあった平成十六年四月から平成十八年七月までの間です。それより以前に異性化糖の混入はありません。
異性化糖を用いた理由〓〓
異性化糖は、とうもろこしのでん粉からとれる糖で、果糖ブドウ液糖と呼ばれています。砂糖や水あめと違い、異性化糖の成分はハチミツと良く似ているのでハチミツに加えても成分や味は余り変わりません。
御社以外にも不適切表示をおこなっている業者は存在しますか〓〓
分かりかねます。
全国はちみつ公正取引協議会に加盟していますか〓〓
加盟しています
巧妙化する
異性化糖の混入
異性化糖の混入は、消費者はもとより販売業者からも見えにくく、巧妙化していると言われる。異性化糖をハチミツに混ぜるタイミングとしては、今回の不適切表示で明らかになったように、ハチミツを瓶詰めする肯定で異性化糖を加えて量を増やすケースがある。これとは別に養蜂家がハチミツに異性化糖を食べさせ、安く採れたハチミツを天然ハチミツとして業者に売るケースもあるという。実際に花畑(蜜源)に蜂を放して蜜を採取するわけではないため、花畑を維持・移動する手間が省け、花の咲かない時期にも安定して採取できるなど、養蜂家のメリットは大きい。しかし、当然のことながらミツバチが集めたからといって、異性化糖を餌にして採れたハチミツにハチミツ本来の効用はまったく期待できない。また、この場合、養蜂家を信頼してハチミツを仕入れ
た販売業者は、まがい物のハチミツとは気付かずに表示・販売・流通させてしまう危険性があり、被害者と加害者の両方の側面を持つことになる。検査による正確な分析によって異性化糖の混入が確認できたとしても、それはまがい物のハチミツを流通させないための一手段に過ぎない。検査技術の向上や厳格な検査を実施することによって、異性化糖の混入はより巧妙化し、判別できなくなる危険性もある。異性化糖の問題に対して、ハチミツと真摯に向き合っている業者や養蜂家は、年に数回、海外の養蜂場にまで直接出向いて養蜂の実態を確認、指導している。こうした努力なしには高品質の天然ハチミツを入手し、消費者に安心して提供することができない。異性化糖の問題を根本的に解決するためには、国内外の養蜂家・商社・はちみつ問屋、製造・販売業者・販売店といった業界全体の取り組みが欠かせない。その中で全国はちみつ公正取引協議会の果たす役割は小さくないはずなのだが……。
(取材・調査・ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成18年(2006年)10月31日(第279号)
(社)全国はちみつ公正取引協議会は検査方法に一考を
消費者を安心・納得させる姿勢を求む
玉川大学にはミツバチやハチミツついて専門に研究している日本でも数少ないミツバチ科学研究施設がある。まがい物のハチミツに混ぜられている異性化糖の問題について、玉川大学ミツバチ科学研究施設主任の中村純助教授は次のように語る。
「以前は単に砂糖や水あめを加えたハチミツがまがい物のハチミツとして出回っていましたが、今では糖の組成分析によって比較的簡単に検出することができるので、現在、単に砂糖や水あめを加えただけのまがい物のハチミツを問題視する必要はありません。
近年、問題となっているまがい物のハチミツには、砂糖や水あめの代わりに異性化糖(注)が使用されています。
異性化糖が開発された当初、原料はトウモロコシに限られていました。ですから、炭素安定同位対比法を用いて、ハチミツ中の炭素の同位対比が蜜源にはなり得ないトウモロコシ型かどうかを判別することで、異性化糖混入を見分けることができました。
しかし、異性化糖の開発技術が進み、トウモロコシ以外の作物からも異性化糖が作られるようになってからは、炭素安定同位対比法では的確な判別が難しくなりました。
そこで、最近では薄層クロマトグラフィーを使ってハチミツに含まれているオリゴ糖を分析し、異性化糖の混入を見分ける方法を用いて検査することもあります。しかし、この方法を用いた場合、特定の蜜源に由来するハチミツでは誤った検査結果が出易いといった問題もあり、現状では異性化糖の混入を確実に見分ける検査方法が確立されているとは言えません」
安く売られているハチミツが全て「まがい物」という訳では決してないが、専門的な検査方法を用いても異性化糖の混入を見分けることは難しいようである。まして消費者が購入時に色、香り、味、結晶の具合、値段などを参考に店頭で「本物」を見分けることはまず不可能である。「公正マーク」が品質の目安になることは確かであるが、異性化糖をも締め出す絶対的な信頼に足るかどうかはこれまでレポートしてきた通りである。
協議会は
検査方法を開発せよ
平成十七年度全国はちみつ公正取引協議会の事業計画には、規約遵守のためにハチミツの定期検査(試売検査)を実施すると記載されている。
しかし、検査を委託されている機関は、全国はちみつ公正取引協議会の幹事を務める「社団法人菓子総合技術センター」である。身内同士で検査し合う体制で果たして有効な検査結果が得られるのだろうか。
また、定期検査とは別に玉川大学に職員を派遣して炭素安定同位対比法による検査・研究を実施するとされている。しかし、この検査方法では異性化糖の混入を充分に見分けられないことは中村純助教授の話からも明らかであり、ハチミツ業界では広く知られていることである。異性化糖の開発が活発に実施された一九九〇年代以降には、こうした状況に陥っていることが業界内で認識されていたはずであるが、協議会の事業計画に有効な検査方法の開発は盛り込まれていない。全国はちみつ公正取引協議会は、率先して新たな検査方法の開発に取り組み、異性化糖の混入による不当表示を排除する行動を取るべきではないか。
飲酒の有無は検査機器に息を吹きかけるだけで簡単にわかる。それでも飲酒運転は減らず、大きな社会問題となっている。検査機器によって飲酒の有無が判別できなければ、飲酒運転をする人はもっと多くいるだろう。飲酒と異性化糖の混入を同列に扱うことはできないが、検査によって混入が判別できないならば、私たちの知らないところで異性化糖を使ったまがい物のハチミツはもっと多く流通しているのではないだろうか。検査体制を強化せず容認してきた協議会の姿勢が、まがい物のハチミツの流通を招き、消費者の信頼を損なう状況をつくり出してしまったのである。
検査による正確な分析は、まがい物のハチミツを流通させないための一手段に過ぎず、検査だけで流通を阻止できる訳ではないが、全国はちみつ公正取引協議会は協議会の事業として早期に有効な検査方法の開発に取り組み、消費者が迷うことなく安心して天然のハチミツを購入できる環境づくりを進めるべきである。
しかし、その一方で仮に新しい検査方法が開発されたとしても協議会で採用しなかったり、検査方法の開発を機に協議会を脱会する企業がでるのではと危惧する声もあることを付け加えておく。
ハチミツの歴史
イギリスに「ハチミツの歴史は人類の歴史」という諺がある。この諺が示すとおりハチミツと人間との関係には長い歴史がある。
チンパンジーは木の枝を器用に使ってハチの巣からハチミツを取り出して食べ、野生の熊もハチミツを取って食べる。そしてハチミツを食べるときに使う熊の手は中華料理の高級食材「熊の手」となるのである。こうした動物の行動から、ハチミツは類人猿の時代から食されていたと言われる。
スペインのアラニア洞窟で発見された約八〇〇〇年前の壁画には、蜂の巣から蜜を取る人の姿が描かれている。エジプトで発見された紀元前二〇〇〇年頃の遺跡には、ハチの養蜂が記録されていた。当時、ハチミツは非常に高価なものとされ、王家のもと多くの人夫によって大規模な養蜂が行われていたそうである。古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、その著書で養蜂について記述している。
また、紀元前のエジプトでは単に食べ物としてだけではなく、その殺菌効果の高さを生かし、薬として利用されることが多かった。古代エジプトの女王クレオパトラは健康のためにハチミツを食し、肌に塗って美容につとめたと言われる。また、アレキサンダー大王の遺体はハチミツ漬けにされて保存され、ピラミッドからはハチミツに浸けられた内臓、えい児などが見つかっている。ハチミツの防腐性を利用し、ホルマリンの代わりとして使用されていたというから驚きだ。ハチミツの効用は古代から様々な形で利用されていたのである。
一九四〇年、オーストラリア人科学者ハワード・フローリーによって、抗生物質(ペニシリン)が開発されるとハチミツを薬として使用することは徐々に無くなっていったが、今も世界各地にハチミツを使った民間療法が残っていることが、天然ハチミツの持つすばらしい力を物語っている。
医療現場での復権
抗生物質の開発によって忘れられていったハチミツの殺菌力は、近年、現代医学の場で見直されつつある。火傷や糖尿病の皮膚潰瘍、床ずれによる傷などに塗り薬として使用されているのである。
天然ハチミツと水分を吸収するアルギン酸を混ぜ合わせた火傷の塗り薬は、二〇〇二年十月十二日にバリ島のテロ事件で火傷をした患者の治療に使われたという。抗生物質が含まれたこれまでの薬と違い、天然成分であることから患部の肉芽成分を助け、ガーゼが剥がれやすく、嫌な匂いも少ないと医療現場では好評だったらしい。
また、数ある天然ハチミツの中でもニュージーランドで採れるマヌーカの木のハチミツは、他の花の蜜と比べてより殺菌力が高く、ワイカト大学のピーター・モラン教授らによって更なる研究が進められている。二十一世紀に入り、ハチミツは単なる健康食品としてだけでなく、殺菌力を生かし、薬として「医療現場での復権」を果たそうとしているのである。
日本での歴史
話をハチミツの歴史に戻そう。日本におけるハチミツの歴史も古い。平安時代には天皇家への献上品としてハチミツが送られたという記録が残っており、エジプトと同様、貴重品として扱われていたようである。
江戸時代になると巣箱を使った養蜂が始まり、伊勢の養蜂家が弘前に行って養蜂の講習会を開いたという記録もあり、各地で養蜂が行われていた様子が窺われる。ちなみに弘前での養蜂は、冬の寒さから上手くいかなかったそうである。(残念)
偽ハチミツの歴史・西洋
砂糖や水あめを混ぜたまがい物のハチミツは、いつ頃誕生したのだろうか。
一説によると、砂糖がハチミツより高価であった十九世紀前半まではまがい物のハチミツは出回っていなかったそうである。水あめを混ぜればその分だけ値段が高くなり、利益が減るのだから当然と言えば当然である。
産業革命によって真空結晶菅や遠心分離器が開発され、サトウキビや砂糖大根等から砂糖が大量に安く生産されるようになると砂糖とハチミツの価格が逆転し、水あめを混ぜたまがい物のハチミツが出回り始める。最初に誕生した国や地域は定かでないが、おそらくヨーロッパを中心に同時期様々な場所で作られたと考えられている。
色や味では見分けが付かず検査方法もない時代である。これ幸いと砂糖や水あめを混ぜたまがい物のハチミツが作られたのであろう。安く作った製品を高く売るといった経済の原理が産業革命時代に自然と起こった訳で、この辺にも「ハチミツの歴史は人類の歴史」という諺の意味が隠れているのかもしれない。
偽ハチミツの歴史・日本
鎖国をしていた日本に白砂糖が入ったのは明治時代になってからであり、調味料として一般家庭に普及したのは、十九世紀末に台湾で砂糖の生産が活発になってからと言われる。第二次世界大戦中に砂糖は配給制となり、戦中・戦後の食糧不足によって砂糖の価格が高騰するとハチミツは砂糖の代用品として売れに売れ、ハチミツ業者の中には「ハチミツ御殿」を建てた者もいたという逸話も残っている。食料不足が解消し、砂糖の価格が下落すると日本でもまがい物のハチミツが作り出されるのである。
「まがい物」が
作られるワケ
日本でまがい物のハチミツが作り出された理由は、単に砂糖がハチミツよりも安くなり、業者が水あめを混ぜて利益を増やそうとしたからだけではない。そこには日本の養蜂業を取り巻く特殊な事情が存在している。
一九六三年、輸入自由化により安価な外国産ハチミツが大量に輸入されるようになると割高になった国産ハチミツの売り上げは減少した。外国産ハチミツとの価格競争は、一部の業者にまがい物のハチミツ作りに手を出させるほど養蜂業を追い込んでいった。さらに郊外の開発が進んだことで花畑(蜜源)が失われ、採蜜量が減ったことも養蜂業の経営難に拍車を掛けた。養蜂は農業ではなく畜産に分類されるが、高齢化・後継者不足といった問題は農業と変わりなく、日本の養蜂家は年々減少している。ニュージーランドやドイツには、養蜂、採蜜、販売などについて定められた法律があり、養蜂業を保護・育成しているが、日本に同様の法律は見られない。日本でまがい物のハチミツが誕生した理由にはこうした非常に不幸な側面がある。
しかし、前述したようにハチミツと人類には長く深い歴史があり、天然のハチミツからはビタミン、アミノ酸、鉄分、カリウム、カルシウムなどの豊富なミネラルが摂取できるだけではなく、殺菌力・防腐性といった様々な効用を得ることができる。健康を促進し、医学的にも見直されつつある効用を安心して享受できない日本の消費者もまた不幸なのではあるまいか。
(注)異性化糖
トウモロコシ等のでん粉から作られたブドウ糖を酵素で果糖に変換(異性化)したもの。一九六〇年代後半から七〇年代に掛けて技術が確立された。原材料欄にはブドウ糖、果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖とも記載される。清涼飲料やパン・菓子類等に使われることが多いが「調味料」にも多く利用されている。無色透明で結晶しづらい、粘性が少なく、保存性が高い、加熱すると着色する等の特性がある。EU(欧州連合)では製糖業保護のため、生産割当が行われており、あまり普及していない。(取材・ハチミツ取材班、まとめ、ジャーナリスト・坂口義弘)
平成18年(2006年)9月30日(第278号)
「公正取引マーク」への疑問「専門店に置いてもらえない?」
「純粋」ハチミツ「値段の格差」は桁違い
都内やその近郊にはハチミツを扱うお店や売り場が数多くあり、少しずつだが増えているようだ。スローフード(注1)やロハスブーム(注2)なども手伝って健康食品としてそれだけハチミツが注目されている証拠だろう。店舗や売り場はそれほど広くないが、お洒落な店内には百グラム、百十グラム、百二十グラム、百八十グラムといった具合に小瓶に分けられたハチミツが所狭しと何十種類も売られている。花の種類は一般的なアカシア、れんげ、みかん、百花だけでなくレモン、コーヒー、ブルーベリー、菩提樹といった中々お目にかかれないハチミツも取り揃えられている。一口にハチミツといってもこんなに種類が豊富にあるものなのかと驚かされる。産地も国産に限らず、ニュージーランド、フランス、スペイン、ギリシャ、ハンガリーなど十カ国程ある。中には原産地が台湾となっているハチミツもあったが、安売りハチミツに多く見られる中国を原産地とするハチミツはほとんど見当たらない。さらに驚いたのはハチミツの値段である。安いものでも百グラム八百円前後。高いものは百グラム二千円以上する。一キログラムに直すと安くて八千円、高いものは二万円にもなる。一キログラム三百九十八円でドラッグストアーやスーパーで売られている蜂蜜とは正に桁違いの値段である。ここまで値段が違うとはたして売れるのか心配になるが、訪れた店は平日にも関わらずどこも賑わっていた。店員に色々と質問し、納得した上で購入する若い女性の姿が目立った。熱心な本物嗜好の客に対応するため、店員のハチミツに関する知識は相当なもので、「紅茶に入れるならみかんのハチミツが良いですよ。他の花のハチミツだと紅茶が濁ってしまいますから」「そばのハチミツは少し癖があるので、ヨーグルトに混ぜると食べやすいですよ」「白く固まっているのはブドウ糖です。湯煎すれば溶けますが、六十度以上の熱に触れると壊れるミネラルがあるので、温めのお湯で湯煎してください」など丁重に説明してくれる。記者もハチミツについての疑問をあれこれ聞いてみた。
随分お値段が高いですね
ハチミツ本来の栄養素がそのまま残っている自然のままの天然ハチミツなので、スーパーなどで売られている蜂蜜よりは少し高くなっているかも知れません。それほど高いとは思いません。天然ハチミツならどこで購入されても同じような値段なのではないでしょうか。国産のれんげなどは花畑がかぎられていて採取されるハチミツの量が少ないので、他の花から取れたハチミツよりも高くなってしまいます。国産、外国産に限らず天然のハチミツは大量には手に入りません。できる事なら一キログラムずつたくさんのハチミツをお売りしたいのですが、できるだけ多くのお客様に買って頂くためには百グラム、百八十グラムといった小さな瓶に分けて販売しなければなりません。それほど天然ハチミツは貴重なのです。
ドラッグストアなどでは一キログラム数百円で売られています?
一キログラムが数百円で売られている蜂蜜にはハチミツ以外の糖分が加えられているのだと思います。ただ、そういった商品には「加糖」、「水あめ」などと成分表示に記載されていると思います。中国産のハチミツには、採蜜場所や花の種類にこだわらず混ぜ合わせ、大量に集められたハチミツがあるようです。そのようにして集められたハチミツなら安い値段で提供できるかもしれません。
「純粋」とラベルに記載されているハチミツも一キログラム数百円で売られていますが?
「純粋」というのは日本独自の基準に基づいて決められています。「ミツバチが集め、ミツバチが持つ特殊な物質による化合で変化・貯蔵・脱水し、巣の中で熟成されたもの」というコーデックス委員会で決められた世界的基準とは違います。日本で決められた「純粋」という基準は「精製ハチミツを使用せず、かつ、添加物を一切加えないもの」とされています。業者によって、原産国、取引量、再三ベースなどはそれぞれ違います。ですから一瓶に安い高いと値段だけで商品の良し悪しを判断することは適当では有りません。極端に安く売られている商品については、どうして安く売ることが出来るのか考える事が必要かも知れません。日本では「純粋」「天然」「熟成」と表示している商品の内容がそれぞれ違います。スローフードの流れの中で区別されている方も増えてきていますが、ほとんどの消費者はその違いを意識せずに購入しているのではないでしょうか。
ハチミツは健康食品として
見直されていますが?
ハチミツ以外の糖分や添加物が混ざっておらず、加熱処理もされていない天然のハチミツにはビタミンやアミノ酸の他に鉄分、カリウム、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれているので、健康食品としては申し分ありません。天然ハチミツには殺菌効果があります。ヨーロッパでは火傷や切り傷などに薬としてハチミツを塗る習慣がある程です。特にマヌカと呼ばれるニュージーランドの高山に自生するフトモモ科の低木植物の蜜は、殺菌力に優れていて、新聞や雑誌などで取り上げらる機会が増えています。マヌカの殺菌力は、ニュージーランド国立ワイカト大学の研究によって、その効果が証明されているもので、商品のラベルにはUMF10+、20+と表示されていて数字が多いほど効果が高いとされています。UMFとはワイトカ大学が認定している唯一の認証マークです。マヌカハチミツは薬のようなもので、同じハチミツでも一キログラム数百円で買えるはちみつとは違います。「加糖」と表示されたり、高温で熱処理されていたりするハチミツには同様の効果は期待できないと思います。マネカの殺菌力は胃潰瘍や胃癌の原因とされるピロリ菌にも効くといわれています。けっして安くは有りませんが、ハチミツが本来持っている栄養分や殺菌力の効果を得るためには、良質のハチミツを選んで購入する必要があります。
四ヵ所の店舗・売り場を訪ねて気付いた事は、「公正取引マーク」が見当たらなかった事である。いずれも天然・無添加などにこだわった商品を販売しているお店である。ハチミツが本来持っているビタミン、鉄分、カリウムなどのミネラルをそのまま含むハチミツを、自信をもって売っている訳である。
「公正取引マーク」の不思議
これらの店に全国はちみつ公正取引協議会の「公正取引マーク」の貼られた蜂蜜はひとつも売られていなかった。商品によってマークを使い分け、「公正取引マーク」を付けたり付けなかったりしているのだ。「マーク」の有無で売上げに差はつかない。
商品に「公正取引マーク」を付けると、一枚ごとにマージンを全国はちみつ公正取引協議会に支払う仕組みになっている。一枚は一円、二円と言った安いものではないので、コストや利益を考え、商品によってマークを付けたり付けなかったりしているようだ。こうした対応をしている企業は少なくない。「公正取引マーク」は全国はちみつ公正取引協議会会員の証しでしかない。「純粋」はちみつを見分ける目安となるが、会員だけしか拘束されない。
親会社は協議会に加盟していて「公正マーク」を使用しているが、子会社は協議会に加盟せず、「公正マーク」も使用していないといった企業もある(業界筋の話)。
他社は他社、自社は自社
訪れた専門店は、店内で扱う商品について自信を持って推奨していた。そこで、「公正取引マーク」の貼られた一キログラム三百八十円のハチミツとどこが違うのか、具体的に聞いてみた。するとどのお店からも同じような答えが返ってきた。
当店のハチミツとは目安となる基準が異なっていますが、全国はちみつ公正取引協議会の基準を守って販売されているハチミツなので、何の問題もありません。ハチミツに限らず他所の商品についてどうこう言うことは相手に失礼ですし、商売をしている者がすることではありません。他所との違いを聞かれても困ります。同じハチミツなのにどうして値段が違うのか。「純粋」ハチミツがどうして一キログラム三百八十円で売ることができるのか分かりかねます。他所の製品の製品と比較する事は適当ではありません。違いについては、全国はちみつ公正取引協議会に問い合わせた方が良いでしょう。
ハチミツというたった一種類の商品を扱う業界である。同業他社と波風を立てることは、自社の存亡にも少なからず影響するのであろう。ただ、他社を批判しない毅然とした態度の裏には、「他社は他社、自社は自社」といった商品に対する絶対の自信が裏付けされているのだろう。
ところで、本物嗜好のお店では商品に対する自信からか、すべてのお店で試食をさせてくれる。ティースプーン半分ぐらいの量だが、なるほど食べくらべてみるとそれぞれ色や香りが違う。雑誌やインターネットをきっかけに来店する客が多いようだが、「安いハチミツはもう買えない」とその味の虜になって再び店を訪れるリピーターも少なくないそうだ。小生も薦められるがままに試食させて頂いた。そのおいしさに抗うことは出来ず、アカシア、そば、マヌカ、みかんのハチミツを購入してしまった。それぞれ百グラムちょっとの小瓶に入れられているが、いずれも値段は千円前後するもので財布には厳しい取材であった。
(注一)スローフード
ファーストフード、食品添加物、遺伝子組替え食品などを見直し、地域の食を再発見する。食がもたらす喜びを感受し、質の良い素材を提供する生産者を守る。農業から食文化まで網羅する運動。
(注二)ロハス
大量生産、大量消費による物質的豊かさを見直し、環境・人間・社会へのやさしさ、精神的豊かさを追求する運動。直接・過激な集団的行動ではなく、自分を犠牲にせず、出来る範囲で行動する。(取材・ハチミツ取材班。まとめ、ジャーナリスト・坂口弘)
平成18年(2006年)7月31日(第277号)
検査方法、監視体制の不備は常識!?
「協議会」主要メンバーの主張
(社)全国はちみつ公正取引協議会の理事などを務める六社からハチミツについて意見を頂戴した。取材に応じた各社は、いずれも自社は協議会の基準を満たしていると答えた。しかし、第三者による検査手段や監視体制が確立されていない状態では、協議会の基準がきちんと守られているのか消費者が判断するする術はない。
また、不正表示については、承知している企業と承知していない企業とに分かれた。承知していない企業によると、理事を務める企業であっても「不正表示を取り締まる義務や権限はない」らしい。取材を通して検査手法や監視体制の不備が浮かび上がってきたが、こうした状況は養蜂業界では広く知られた「常識」であるらしい。
(社)社全国はちみつ公正取引協議会には、消費者に表示の規定を十分に説明し、養蜂業界の「常識」を改善することを強く望むものである。
加盟各社に直接取材
(前回に続き第二弾)
当社は(社)全国はちみつ公正取引協議会の規約を遵守し、きちんと成分表示している。協議会に加盟していない一部の業者が不正な表示をしたハチミツを販売しているという話を聞いた事はあるが、協議会の「公正マーク」のあるハチミツにはそのような問題はない。(社)全国はちみつ公正取引協議会に加盟している業者は百社くらいしかない。(平成十八年三月一日付・正会員百十二社・賛助会員七名)加盟数が少なく業者同士の交流もあるので、不正表示などをすればすぐにわかる。
不正の噂が広まれば信用問題に関わるので、協議会の中にそんな危険を犯してまで不正表示をする業者はいない。消費者は協議会の「公正マーク」を信頼し、安心して購入して欲しい。日新蜂蜜ではこうコメントしている。当社は小さい養蜂業者なので、生産したハチミツの約九割を小売で販売している。ずっと以前に数週間だけ商業登記した会社が、不正表示したハチミツを短期間に大量に販売して売り逃げたと言った話を聞いた事はあるが、ここ十年はそのよううな業者の話を聞いた事はない。しかし、このような業者がいないからといって何も引かず何も加えない、混じりっけなしの百パーセント純粋なハチミツだけが「純粋」として販売されている訳ではない。ハチミツを取り扱う協議会は、(社)日本養蜂はちみつ協会と、(社)全国はちみつ公正取引協議会があり、前者は生産者を中心とした団体で、後者は流通・販売業者を中心とした団体と言われている。団体の性格が異なるので致し方ないのかもしれないが、表示に関する基準はそれぞれ異なっている。(社)全国はちみつ公正取引協議会では、純粋・天然・完熟・pureなどと類似の意味内容を表示する場合には、「純粋」または「pure」に統一するとした上で、「純粋」または「pure」の文言は精製はちみつを使用したもの、または、添加物を含むものに表示してはならない、と規約で定められている。
一方、(社)日本養蜂は、はちみつ協会には「国産天然はちみつ」に関する独自の規約がある。また、いずれの団体にも加盟していない業者には、上記規約は適用されない。このような状況では、消費者が百パーセント純粋なハチミツを購入しようとする場合、パッケージや成分表示は必ずしも参考にはならない。百パーセント純粋なハチミツを手にする有効な手段が消費者に十分講じられているとは言えない。ハチミツの入った加工食品や飲料には精製ハチミツが使用されている。精製ハチミツは「雑はちみつ」から色や匂いを取り除いたものであるが、加工する過程でビタミン・ミネラルといった栄養素も失われている。消費者が精製ハチミツを使用した加工食品や、飲料からも「はちみつ」本来の栄養分が摂取でき、健康にいい・体にいいと誤解している可能性は少なくない。パッケージには「精製はちみつ」ではなく、「はちみつ」とだけ表示されている場合が多いため、消費者はなおさら誤解するのかも知れない。しかし、砂糖は多糖類なので体内でブドウ糖と果糖に分解しなければならないが、精製ハチミツは「はちみつ」と同じ単糖類なので、胃や腸に負担をかけずに消化できるという「はちみつ」の特性を有している。糖分としての「はちみつ」の良さは損なわれていないわけだから、「はちみつ」と表示しても良いと私は考えている。ある有力企業はこう答えている。
外国と日本とはここが違う
「はちみつ」を論ずるとき消費者やマスコミには大きく分けて二つの見解があると思う。一つは何も足さない何も引かない百パーセント純粋な「はちみつ」でなければ「はちみつ」ではないとする見解。もう一つは「はちみつ」に他の糖分を加えたものも「はちみつ」ではあるが、糖分を加えた旨の表示はきちんとしなければならない。不正表示は許されないとする見解だ。前者は欧州など外国の基準に多く、後者は日本独自の基準であると言われる。現在の歴史を踏まえれば、日本では糖分を加えたものは「はちみつ」として扱わなければならない。これを前提にした場合、業者は表示違反をしない業者と、表示違反をする業者の二つに分かれる。問題になるのは、もちろん表示違反をして販売する業者だが、表示違反を見分けることは検査手法と監視体制の両面から難しい。検査手法は一昔前と比べれば格段に進歩している。液糖・水あめを単純に加えた場合、糖度・PH・水分比率などの組成基準を調べることで、混入の有無や度合いがすぐに分かる。だから、単純に液糖・水あめを加えたものを「純粋はちみつ」と表示して販売するケースは少なくないと思う。やっかいなのは異性加糖である。異性加糖は主にトウモロコシの酵素から取れる糖分であり、本来は「はちみつ」に含まれていない糖分だから、混入の有無だけを検査する事は比較的簡単だ。しかし、検査では極めて少ない量の異性加糖に反応してしまう。異性加糖液はジュースやお菓子にもつかわれているから、道ばたにおかれた缶ジュースなどを蟻がえさにすると検査に反応してしまう。つまり、異性加糖を故意に使用したのか、偶然混入したのかを判断する事は難しいのだ。また、異性加糖を使用することについては国際基準である、コーデックスで規制されていないため、協議会の基準を満たしていれば、異性加糖を加えたものであっても「純粋」と表示することに対して、業者は抵抗感を余り感じていないのかも知れない。表示違反を監視するのは、保健所や農林事務所といった機関の役割だと思うが、こういったところは「はちみつ」の表示違反については、ほとんど把握しておらず、十分な検査もしていないのではないか。消費者からの苦情や疑問については、いわゆる消費者センターが受け付けていると思うが、積極的に取り組んでいる様子は窺えないし、消費者からの問い合わせもそれほど多くはないと思う。不正をはたらく業者は、こういった検査手法や監視体制の不備を熟知しているので、不正表示された商品が出回っていることになる。
これも協議会の有力者のコメントである。ジャーナリスト・坂口義弘
平成18年(2006年)6月30日(第276号)
(社)社全国はちみつ公正取引協議会に不信
加盟六社(理事ら)取材に応じる!
各省庁は、口を開けば「食の安全」を国民に訴えている。しかし、国民が省庁を信頼し安心しているかといえば、はなはだ疑問である。
輸出する国も、あの手この手を使っている。例えば、三角貿易が行われたら「食の安全」はお手上げである。牛肉の問題にしても、BSE問題でアメリカと貿易摩擦がいつ起きても不思議ではない状態にある。アメリカ産の牛肉は七十二パーセントがメキシコに輸出されている。メキシコはBSEが発見されていないので、メキシコから日本に輸出されている。ところが、メキシコ産の牛肉にアメリカ産のラベルが貼ってあったという笑えないニュースがある。これが三角貿易である。
ハチミツ業界も、日本が規制を厳しくしたため、中国からハチミツが輸入できなくなった時期がある。卸売業者、販売業者らは倒産すると大騒ぎをしていた。だが、ハチミツが不足した話は聞かない。三角貿易が公然と行われていたということである。
「岩のり」の「天然」「養殖」の問題で、公取委から排除命令が出たとたん、東急、西友などの大手スーパーの店頭から岩のりが消えた。卸売業者も販売業者も取引口座があるはずであり、品質の管理確認もしないで消費者に販売しているのだろうか。「ニセ物」を販売してぼろ儲けした販売業者は無罪放免なのか。責任は問われないのか。消費者から見れば、ニセ物を天然物と証して高額なものを買わされたのである。「害にならない」で片づけていいのか。
この原稿をまとめていたある日、正確には二〇〇六年年五月二十九日、日経新聞に株式会社日本サンガリアバレッジカンパニーなる企業が「お詫びとお知らせ」を掲載していた。昭和二十六年設立の健康飲料会社の老舗である。内容は、同社の果樹百パーセント商品に加糖・酸味料表示の欠落があるとの指摘を受けた。調査の結果、改正の必要があると確認、自主回収をする、というもの。健康飲料会社にも真面目な会社があるということで、ホッと胸を撫で下ろす心境だ。早速取材を試みた。
質問 公取委の葉排除命令があったのか。
応答 排除命令ではなく、自社独自の調査の結果、事実が判明しましたので、自主回収を決断しました。お客様があっての当社です。お客様との信用を第一にしたい。
誠意ある行動こそがルール≠ナあり販売会社と消費者との信頼関係と言うべきものであろう。
はちみつ協議会
加盟各社に直接取材
さて、全国はちみつ公正取引協議会の野々垣会長は、理事の中からも「会長に相応しくない」との意見が聞かされる。理事会の開催は形だけ。野々垣会長が前もって案を作り強引に決定するのが、ワンパターンという。では同会の役員はすべて能無しで人材は皆無なのかというと、そうではない。今回、同会の理事、幹事、相談役にハチミツに関するあれこれを質問してよく判った。取材に応じた理事、幹事、相談役(以下、会社とする)は六社、取材に応じなかった会社(拒否・担当者不在・協議会に聞いて欲しい)は十八社。取材に応じて下さった各社に、紙上を借りて御礼申し上げたい。
「ハチミツは栄養素・保在性とも、非常に優れた商品なので、添加物といったものを加えて販売することなどあり得ません。当然、コストは高くなり、売り難くもなります。純粋ハチミツに液糖を加えたものが安く市場に出回っています。全国はちみつ公正取引協議会に加盟している業者の場合、表示規定に沿って加糖ハチミツとして販売しています。加糖ハチミツを純粋ハチミツとして販売していると言う話は聞いたことがありません。消費者が純粋ハチミツと加糖ハチミツを見分けるポイントは、ラベルと成分表示です。ドラッグストアなどで販売されている非常に安価なハチミツは、原料単価を考えれば純粋ハチミツではあり得ないと判断できます。非常に安価なハチミツは、加糖ハチミツと表示して販売しているはず。ずっと以前は、液糖が多いといろが薄くなるので加糖かどうか見分ける場合、ハチミツの色もポイントになったのですが、アカシアの花などきれいに透き通っており色では決め手にはなりません。全国はちみつ公正取引協議会には、細かい表示規定があり、規定がしっかり守られているので、協議会による『公正マーク』の入ったハチミツであれば問題はありません。協議会に加盟している業者しか許されていないマークなので『身内に甘い基準ではないのか』と指摘されることもありますが、加盟している業者でも基準を満たしていない商品もあるにはあります。例えば『公正マーク』は輸入ハチミツには使用できるが、国産ハチミツには使用できないという規定。
当社では加糖ハチミツは扱っておらず、中国のブレンドで、純粋ハチミツの小売を中心に販売しています。一部を西友などのスーパーに卸しており、当社のハチミツは西友でファインセレクト、ポットマークといった商品名で販売しています。その際、当社の表示はなく『西友ブランド』で販売しています」(同会相談役・埼玉養蜂)。
「水アメなどを混ぜたハチミツをハチミツを純粋ハチミツとしている業者がいるとは、聞いた事がありません。協議会の基準を満たしていれば『純粋』と言えます。
協議会に加盟していない一部の業者が不正